「…、ゆーいちろー」
「えっ今なんかゆった?」

いいえ。ただあなたの名前を呼んでみただけなのです。

なんて、心の中で思うだけにして不思議そうに私を見る、思わず胸がきゅんとなる笑顔に私も笑って首を横にふった。野球しているときは凄くかっこいいのに普段はどうしてこうもかわいいんだ。

「何でもないよ」
「そっか!ならいーけどっ」

この笑顔を一番近くで見られる私って本当に幸せ者だと思う。っていうよりも、無邪気に笑う田島の顔を見ると今この瞬間が一番幸せだなって思うんだよ。

「悠一郎、って言っただけだよ」
「えっ」
「あれ、また聞こえなかった?」
「きっ聞こえたよ!」
「びっくりしすぎでしょ」
「だって名前が俺の事名前で呼んだの、ハジメテだもんよー!」

そう言った田島の顔はとても嬉しそうで。

…だって田島は最初から私のこと名前呼びだからいいけど、途中から呼び方変えるのって結構難しいんだもん。タイミングとか。それに変に緊張したし。

急に恥ずかしくなってきて、照れ隠しに早口でそう言い切ると嬉しそうだった顔が一変して拗ねたような不機嫌な表情になる。

「なんでまた田島に戻すんだよー!」
「しょうがないでしょー、まだ慣れてないんだもん」
「さっきみたいに悠一郎がいいっ」



そんなの、これからいくらでも呼んであげるから。そしたら、さっきみたいに私を幸せにしてくれる笑顔をたくさん見せてちょうだいね。悠一郎くん。
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