私には好きな人がいる。でもその彼にも好きな女の子がいるらしいことを最近知った。明るくてとても話しやすい性格で、おまけに可愛くてスタイルも良い。その彼女の自宅に上がり込んだ私は勝ち目がないと机にうつ伏せた。
「誰よソレ?」
「………。」
アンタだよ!とは言えない。
「てゆうか誰に聞いたのそんな話?」
「…………。」
アンタの手持ち精霊だよ!とは突っ込めない。突っ込みはルーシィの専売特許だ。
「グレイの好きな人ってナマエだと思うんだけどなぁ。ジュビアも言ってるし」
「……あの子はグレイの周りの女みんな恋敵って思ってると思うよ」
まぁ確かに…。なんてルーシィがこの場にいない彼女を思い出して苦笑いした。
『グレイから見たルーシィ。ギルドの新人。ルックスはかなり好み。少し気がある』
ニルヴァーナの戦いのときに言ったジェミニの言葉が頭から離れない。あの時はそれどころじゃなかったし、あまり気にならなかったけど後から言葉の示唆することをゆっくり消化すると、それはつまり必然的に私の失恋って意味じゃん。
「ルーシィ双子宮の鍵貸して!!」「何よ急に?」
「ジェミニにグレイが私の事どう思ってんのか聞く!」
いや、鍵貸してもアタシじゃないと扉開けないからね。と冷静に突っ込まれる。……もう何でもいいからとりあえずジェミニ呼んでよ!!と私が口を開こうとした時だった。
「…そーゆうのは自分で本人に聞くモンじゃねぇの」
玄関の方から聞こえた声に開いた口が塞がらない。ルーシィと声の方に振り返れば噂のご本人さま登場。なんてこった!
「何でアンタがここにいんのよ!しかもまた勝手に上がって来て!」
「ギルドでナマエがここに居るって聞いてよ、わりーけどルーシィこいつちょっと借りる」
「…ご自由にどーぞ連れ帰ってください」
やばいグレイに聞かれた!どうしようもしかして怒られる?いや振られる?今のルーシィとの会話聞かれてたとしたら私がグレイのこと好きなのバレたよねマジどうしよう!
なんて考えていたらグレイが私の手を掴んで「行くぞ」って玄関へ連れて行かれそのままアパートを出た。あぁ私が振られたらまた帰ってくるから慰めてねルーシィ。
「…で、何のご用件でしょうか?」
少し歩いて公園があったので私が足を止めて言うとグレイも立ち止まり振り返った。そこで手が離されて、そういえば今まで繋がれていたことに気づく。掴まれていた右の手首が熱い。
「…お前何か勘違いしてねェ?」
「何の話よ」
「……俺が好きなやつ、お前なんだけど」
グレイが言った。…沈黙。
「うそだ!」
「なんで言いきってんだよ!」
「だって、ルーシィは?!」
少し気があるくせに!!と言ってやると自分の黒髪をぐしゃぐしゃとして「誰がんなこと言ってたんだよ…」と呟く。
ジェミニだよ。双子宮のあの子たちは変身したひとの姿や思想までコピーできる能力があるんだよ。そのジェミニがグレイになった時に言ったんだもん。きっとグレイは自覚ないけどルーシィが好きなんだよ!
「…だから、俺が好きだって自覚してんのはお前だけだ」
真剣な顔でそう言ったグレイの顔は少し赤い。まさか…、ほんとに?…いや、そんなまさか。真実を見極めようとグレイの目を怪しんで見つめる。
「信じてくんねぇの?」
「……やっぱルーシィんとこ戻ってジェミニに聞こう!」
「なんでだよ!」
グレイが叫んで、ぎゅっと抱きしめられた。いや何でだよはこっちだよ何やってんの。…、でも心臓がありえないくらいバクバクしてる。
「…お前は俺のことどう思ってんだよ」
消えそうな声に思わず息が止まった。
「…すきだよ」
今気づいたけど、密着して聞こえてきたグレイの胸の音も、私と同じくらいドキドキしていた。
誰よりも君がすきです
「開け双子宮の扉っ!」
「グレイから見たナマエ?ルックスはルーシィと同じくらい好み。」
「だけど誰よりも気になる女の子。もちろんルーシィよりもね」
「…。」