最近名字が変だ。俺がそう言えば阿部が名字は元から変だ。と言う。まぁ否定できないところも確かにあるけどそういうんじゃなくて。なんか、俺に対する態度が以前と違ってよそよそしい。

「意識してんじゃねぇの。お前があんなこと言うから」

平然として阿部が言うあんなことに、心あたりはないわけじゃないけど。てゆーかそれしかないよなぁやっぱ。


昼休みが終わる少し前、次は移動教室なので教室を早めに出ると廊下で名字に会った。つい今まで友達と楽しそうに話していた名字の声が俺と目があった瞬間に途絶える。くち、開けっぱなしだよ。苦笑いしそうになるのを堪えて「名字」と彼女の名前を呼んでみた。

「さ、さかえぐち」

意識、してくれてんのかなぁ。俺がそう思ってしまうのは名字の顔が少し赤くて俺と目が合うのを避けるように彼女が目をおよがせるから仕方ないと思う。そんな名字を見るのはあの日からよくあることだ。柄にもなく女の子らしいとこもあるよなぁ。

「わた、私次あれだった!あれ、あの、…そんなわけで教室戻るわ」

誰だってそう何度もあからさまに避けられちゃいい気はしないと思う。逃げるみたいに去っていく名字を、阿部だったら腕を掴んで引き止めたり追いかけたりできるかもしれない。何もできずただ立ち尽くすしかできない自分が情けなくてため息。

好きな子に避けられるのって、結構ショック大きいんだよ、名字。もしそれを分かっててやってるなら多分俺は相当へこむだろうけど。名字はそういう計算高いような女の子じゃないのは分かってるから、あまり気にしないことにしよう。

そうだよ
俺は名字が好きだよ。
意識してくれているのなら、わずかな可能性に期待してもいいんだろうか。
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