「田島の遺伝子が欲しい」

呟くと阿部から心底気持ち悪いという視線を向けられて、栄口は一時停止して固まった。

「えっ名字って田島が好きなの?」
「栄口、こいつは変態なだけだから」
「違うから。変な意味じゃないからね。ただ平凡でなんの面白味のない私も田島家の人間に生まれていたらもっと独自性のある個性的で魅力的な人間になれるかなーと思ったんだよ」
「お前は十分個性的な馬鹿だよ」
「阿部は口を慎め!」
「何様だよお前」
「うるさい馬鹿」
「馬鹿はお前だろ…ってーな!殴んなよ女のくせに馬鹿力」
「馬鹿ばっか言うなっ」
「事実だろっ」
「中学の頃の阿部はこんなに口悪くなかったのにっ」
「中学ん時はお前と関わりなかっただけで、俺は昔からこんな性格なんだよ」
「…確かに話すようになったの高校上がってクラス一緒になってからだっけ」
「…そう言われればそうだな」

そういえば栄口も同じ中学出身なのに仲良くなったのは高校に入ってからだ。あれ。とここでさっきのやりとりに全く参加してこないことに気づいて栄口に振り向いた。いつも私と阿部の喧嘩まがいの会話にフォローや仲裁をして場をなだめるのはもはや栄口の役目だ。

「どうかした栄口」
「…何でもないよ。でも俺は名字のこと、十分魅力的な子だと思ってるよ。中学の頃から」
「はっ?」

栄口からの不意打ちに冷静に対応できず、おまけに顔が熱くなる。

「よかった。一瞬田島のこと好きなんだって思っちゃった」

爽やかに笑って言う栄口の後ろで阿部がびっくりしてたけど、そのときの私は栄口の横顔しか目に入らない。心拍数が跳ね上がって、まさか栄口にときめかされるなんて予想外だ。

そうなの?どうなの?
ねぇ深い意味はあるんですか?
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