3回目のコールで繋がって、受話器から発せられる声にどきどきした。
「…んだよ」
ちょっと不機嫌だけどそんなとこも可愛い。言ったら怒られるから思うだけに留めるけどね。
「今からうち来て」
「ハァ?ふざけんな」
「えっ本気だよ?」
「つか今何時だと思ってんだよ。ねみーんだよ俺は」
「0時前だね。とか言いながら電話出てくれる泉の優しさがすきー」
「………」
「今出なきゃよかったって思ったでしょ」
「………」
「あ、電話切っちゃだめだからね」
プッ、ツーツー…
言った瞬間に切られました。速攻でリダイヤル。…出ない。めげずに再度リダイヤル。出ない。を繰り返して7回目。
「うっぜーんだよいい加減にしろ!!」
泉がキレた。大声で怒鳴られてビビった。
「ちょっと泉怒るならもう少し静かに怒鳴らないとお家のひとびっくりして起きちゃうよ」
「…ほんとなんなのお前」
あ、ちょっと声ちっちゃくなった。なんだかんだ素直だな。そんなところが可愛いんだよな。
「夜ってたまに寂しくならない?」
「ならねーよ」
「私はなるよ」
「しらねーよ…」
「泉の声が聞きたくなったんだよ。会いたくなったんだよ。今すぐ側にきてほしく、」
「あーもー分かったから」
「えっ!来てくれんの?」
「行かねえよ。つかお前んち知らねーし」
「知ってろよ!」
「なんでだよ。お前は俺んち知ってんのかよ」
「知ってるよ」
「…うそつけよ」
「うんごめん。今のうそ」
だいたい家なんか知らなくても学校で会えんだろ。クラスメイトなんだから。受話器越しに聞こえる泉の声は、顔を見なくても呆れてるんだろうなって分かる。
「ねー、泉」
「なに」
「すき。付き合って」
「………」
「本気だよ」
「…前も言ったけど。俺いま部活忙しいから、んな余裕ねえんだよ」
「うん。そう言うと思った」
「思ったんなら言うなっての…」
「じゃあさ、部活休みになったらデートしようよ」
「……暇だったらな」
脈なしではないと思うんだけどなぁ。こうやって律儀に電話は出てくれるし、忙しくないときはメールも絶対返してくれる。学校でも泉と一番仲の良い女の子は私だと言える自信もある。でもだからといってイコール泉が私を好きにはならない。そんなのは承知の上で、べつに不満もない。だから、いいんだ今はまだ。
「なー俺明日も朝練なんだけど」
「あっ、もう寝る?」
「うん」
「じゃあまた学校でね」
おやすみ。そう言って電話を切られた。とりあえず、デートの約束をとりつけられたから、今日はこれでよしとしよう。
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