05
* * *
俺は思わず咥えた煙草を落とした。
そしてナルトが「ラグが焦げるってばよ!」と、慌てて拾ってくれた。
「お前…シカマルとやったことあるか?」
「あるってばよ!でもさ、あいつ強えーの!五回に一回位しか勝てねーの!」
ほっぺを膨らまして悔しそうに言うその言葉に、俺は驚愕した。
あのシカマルに、勝率20%だと?
こいつ、一体…?
その時、呑気なメロディと共に、風呂が俺らに声を掛けてきた。
『お風呂が沸きました』
「俺もう限界!勝った方が、先入る約束だったってばね〜」
そして、金髪小僧は起ち上がって風呂に駆けていき、俺は仰向けに転がった。
「とんだ食わせ者だぜ…」
だけど、それだけが、あいつの本性じゃないと知ったのは、それからほんの一時間後の話だった。
* * *
風呂から上がったナルトは、バスタオルを腰に巻いて、リビングに現れた。
「せんせい〜なんか着るもの貸して!」
将棋に負けたショックで、俺はそういう気遣いっつーものをすっかり忘れていた。
「あー…ちょっと待ってろよ」
そして俺は、Tシャツとトランクスをナルトに放ってやった。
「うわ!でか!」とか騒ぎながらTシャツを着ると、それは見事に膝まですっぽり。
「これならパンツ要らないってばよ」
「そうか?なんかスカート穿いてるみてーだな、おい」
「ぶー…」
むくれるナルトに俺は思わず微笑んだ。
なんか、こいつといると楽しいな、なんて思ってしまう自分に驚いた。
そして俺は一人風呂に向かった。
15分後、戻ってくると、ナルトはリビングに居なかった。
「何処行きやがった…?」
そう呟いて、腰にバスタオル巻いたまま隣の部屋を覗くと―――
ちゃっかり、人のダブルベッドの真ん中で、蹲って眠っている金髪少年。
「躾がなってねーぞカカシ…」
そう呟いて、ベッドに近づいた俺は、
目を奪われた。
枕を抱き締めて眠る、その姿に。
ぶかぶかの布から伸びる、華奢な手足や、微かに濡れている金糸や、うっすら上気している頬、そして、薄紅色のふっくらした唇に、ごくりと喉が鳴るのを感じた時には遅かった。
俺は吸い込まれるように屈み込み、
気付いたときには、口づけを落としていた。
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