03
「ナ、ナルト…」
弱々しく名を呼びながら近づいてくる男に向かって、俺は詰問した。
「おい、てめえ、今の話は本当か?」
「あっ…貴方には関係ありません!」
小生意気だな、おい。
俺は更に凄んだ。
「今すぐ即座にとっとと失せれば…命は助かるぜ?」
男は怯えた声で叫んで、脱兎の如く逃げて行きやがった。
「全く中忍ともあろう野郎が、根性ねーな」
思わず呆れて出た言葉に、隣で未だ俺の袖を掴んでいたナルトは―――震えていた。
しかし、焦って視線を落とすと、こいつは吹き出した。
「ぷっ!そりゃ逃げるってばよ!今のアスマ先生ってばマジ怖かったぁ〜!」
あははと愉快そうに笑うガキ。
震えてたのは、笑いを堪えてやがったのか!
そして、雨に打たれながらも、晴れの日の笑顔で俺を見上げるナルト…
その瞬間、俺は初めてこいつを―――可愛いなんて、思ってしまった。
思わず焦って視線をそらし、雨降ってるっつーのにポケットの中の煙草をあさった。
すると、俺の袖をくいくい引っ張る金髪小僧。
「なんだぁ?」
「俺さ、今夜さっきの兄ちゃんちで風呂借りようとしたんだけど、いきなり押し倒されて、変な薬飲ませられそうになってさ…怖くて逃げてきたんだ」
近頃、里の風紀はおかしいらしい。
「じゃあ、うちで入ってくか?ついでに遅いし雨も降ってっし…泊まってけや」
そう提案すると、ナルトはにっこり笑って俺の腕に抱きついてきた。
「さんきゅーアスマ先生!」
…無邪気なガキ。
そう思っていた。
そん時までは―――
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