03




「イタチ兄ちゃんは大好き。だけど、風影のお兄ちゃんも大好きだってばよ」



もちろん、テマリ姉ちゃんもカンクロウ兄ちゃんも、と付け足され、我愛羅は誰にも分からない程度の、最小限の顔面筋肉の動きだけでムっとした。


「だけど、なんとなく、ただなんとなく…



寂しいんだ――――」




そう言って膝を抱える、自らと似た運命の元に産まれた少年を、我愛羅はどうしていいかわからずに、ただ見守った。

数分後、彼はナルトの額に無言で口付け、立ち上がった。


その時だった。


この建物の屋上への扉が開き、数人の制止する声を背中に受けながら、一人の男が現れたのは。




「ナルト…!」


自らの名を口にする男を、金の少年は膝を抱えたまま振り向き、そのガラス玉に映した。

銀の髪、片目には傷、声はとても低くて苦しそうな男。



「…あのときの…にいちゃん?」






「ナルト…帰ろう?」





言葉を覚えたナルトには、二週間前には言い表せなかった彼の瞳や声から伝わる印象を、言い表すことが出来た。


「どして…そんなに“必死”なの?」

怯えた瞳のナルトは我愛羅の後ろに隠れながらも、小さな声で、そう尋ねた。


たった一人、風影の目前に現れた男の後ろからは彼を殺そうとする数人の警備兵。

しかし彼らはそれを、一人の少女に制止された。

「介入するな!私が見張るから、お前達は下がってな!」

「しかし、テマリ様…」

「五月蠅い、何度も言わせるな!」

有無を言わさぬ少女の口調に、警備兵達は渋々と引き下がった。

背後の忍達が下がったことを確認した男、カカシはナルトに向かって、歩み寄った。



「お前と居たい。生きていきたい。苦しみも悲しみも全部全部分かりたい。少しでも幸せをあげたい。そうやって、ずっと一緒に生きていきたいんだ。

だから、必死なんだよ」



ナルトは我愛羅の服を強く掴んだ。

それは感じた我愛羅はナルトを後方に押しやり、カカシの前に立ちはだかった。

「今更、随分勝手な言い様だな。木の葉の者はこいつを諦めたと聞いたが?」

静かながらも辛辣な口調に、カカシはしかし、怯まなかった。

「諦めたんじゃない。あの時はそれが…里を離れることが、九尾を引きはがすことがナルトの幸せだと思ってしまった。

…今でも、矢っ張りそうなんじゃないかと思う。
だけど…」

カカシは、視線をナルトに向けた。

真っ直ぐと両の瞳を、どこまでむ空虚な瞳に注ぐ。

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