カカシ視点
そして、
君は俺の前から消えちゃった。
引き留められなかったこの両手を…
どこへやればいいの?
* * *
あの後、どうやって、里まで戻ってきたのか、全然覚えていない。
サスケはいつの間にか居なくなっていた気がする。
それから数日間も、どうやって過ごしたか、覚えていない。
「いつまで塞ぎ込んでやがる。五代目がお呼びだぜ?」
人の家に勝手に入ってきた、偉そうな髭。
「なに…?」
「もの食ってんのかよ、お前」
食べれるわけないじゃん。
あの子がいないのに。
「後悔するぐらいなら、なんであん時…」
アスマは、言葉を口の中でかみ砕いて、飲み込んだ。
分かってる。
分かってるよ。
分かってるから。
悔しいんだ。
「ともかくだ、五代目がお呼びだ」
イタチを呼んだ張本人なんかに、正直会いたくなかった。
それでも、足を向けずに居られなかったのは、“火影”に対する、僅かな忠義。
そして、漠然とした、何か。
* * *
「ふん、ふぬけた面だな…全く、不細工にも程がある」
数ある暴言の中でも、産まれて初めて言われたよ。
不細工だなんて。
「別に、顔なんてどうでもいいです…」
俺は無駄にデカい乳を持つ火影から視線を逸らした。
「そんなことじゃ、今回の任務は別の奴に回すしかないね。ヤマトかサイ、それともアスマかゲンマかイルカか…」
揃いも揃って、あの子に惚れてる輩の名前。
からかうにも限度がある。
「いい加減に…してくださいよ…」
思わず敬意も礼儀も失った俺を、五代目はじっと見据えてきた。
まるで計るように―――
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