03
「…俺がこの子を見つけ、全ての事実をあの男に…事件の首謀者に自白させた時には、ナルト君は手の施しようがない位に、心を壊されていた。
当然だ。
俺は瞳術によってナルト君の記憶を消去したが、それでも、彼の心の傷は消せなかった。しかも、九尾の力によって、俺の術ですら、長く効力を保てなかったそうだ」
その時、ナルトが俺たちの居る方に戻ってきた。
目が合った。
「…おいで?」
そう言って、手を差し出すと、ナルトは大きな瞳をめいいっぱい見開かせて、少しずつ近づいてきた。
「にいちゃん、おれのことしってるの?」
うん。
好きな食べ物も。嫌いな食べ物も。誕生日も。
笑うときの仕草も。クナイを投げるときの癖も。
「知ってるよ」
ナルトは微笑んだ。
「じゃあ、にいちゃんも、おれをジョウカしてくれるの?」
「―――…」
俺は手を差し出したまま、ナルトを見つめ続けた。
もう、目を逸らさないって決めたから。
そして、君は更に言うんだ…
「おれってばね!ジョウカいっぱいしてもらってね、“いいこ”になるんだ!」
「ナルトは、良い子だよ?」
君はそんなに綺麗なんだから。
だけど、俺の言葉にナルトは俯いてしまった。
「…ちがうよ。いいこじゃないから、あっちいけって石投げられる…川にぽいってされる…服とられてね、木にむすばれちゃうの…」
痛い。言葉の礫が痛い。
シカマル達が後ろでどんな顔しているか、見なくても判る。
きっと、今ここにいる俺たちはみんな、同じ顔なんだ。
「だけどね、ジョウカしてもらったらね…」
ナルトは眩しいくらいの笑顔で、俺を見上げた。
「もう“むし”とかされないし“ともだち”もできるっておにいちゃんたちがね、いってた!」
だから、がんばる
なんて、綺麗過ぎる笑顔で言わないで。
俺の瞳からは、知らず知らずのうちに、雫が溢れていた。
もう失くしたとさえ思っていた、涙だ。
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