03





「何ソレ?」



俺は声をあげて嗤った。




ああもう、今日は余裕がない。
いつもは上手くやるのに。
繕う余裕が全くない。
抑えられない。




「バッカじゃねーの?」




シカマルを見つめてそう言った瞬間、あいつは、絶句して、うつむき、俺の肩から手を離した。

煙草を地面に捨て、踏みつけたアスマは言う。

「シカマル、そろそろ時間だ。早く行け」



シカマルは無言で消えた。


その瞬間、拳が俺の顔目掛けて飛んできた。



バシッ!!



顔を殴られ、吹っ飛ぶ俺。
だけど、すぐに胸ぐらを掴まれて、立ち上がらされる。


「てめぇは、そうやって自分の欲で人踏みつけて満足か!?あ!?」


アスマが怒鳴るけど、全く、俺の耳になんて入りやしない。


「抱く気ないならサ…もう離してくんない?」


素っ気なくそういうと、更に力を込められた。


「シカマルも、あいつ…カカシも、てめぇにマジなんだよ!わかんねぇのか!?

過去に何あったかなんて知らねぇがな、ナルト!

不幸な人間は誰傷つけてもいいなんて道理はねぇんだよ!!」


「…」




もういいよ、どうでもいいよ。


だからさ、早く俺を解放してくれ。



体が疼いて仕方ないんだ…狂っちまう。





無言の俺に痺れを切らしたのか、アスマはもう一度拳を振り上げた。


また殴られてやったら、この場は治まるかな、なんて思っていた。


だけど、拳は降りては来なかった。



俺の顔の前には、掌の盾があり、それがアスマの拳を押さえていた。




「そん位にしてもらえねぇか?アスマ」

「…ゲンマ」


現れたゲンマは、俺とアスマの間に割って入った。

そして、俺を庇うように、背中に隠す。

「退けやがれ」

「断る。そんで、今日はそっちが退いてくれ。
俺の見たとこ、既に一発喰らわしてんだろ?これ以上やっても、こいつ…堪えねぇよ」



楊枝を咥えながら、飄々と言いのけるゲンマに折れたのか、アスマは立ち去った。












「らしくねーな、お前。どうしたよ?」

にやりと笑って振り向くゲンマに、俺は縋り付いた。

もう限界。

壊れちゃう。



「ゲン兄…抱いて、早く、今すぐ!」



彼は何も言わず、俺を抱えて、家に向かった。








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