カカシ視点(イルナル←カカシ)




いつからかな、お前に心、捕らわれたのは。

初めてお前を見たときは、無垢な赤子だった。

数奇な運命を背負ったその子に思ったのは、ま、どう育つかなっていう程度の、漠然とした興味に似た無関心。

当時、人の生き死にを見過ぎていた俺は、あまりに人の生き死にに対して、感覚が麻痺していた。

それを後悔する日が来るなんて、当時の俺には知る由も、知る術もなかったんだ…




ごめんな、ナルト。








それから12年、久々に目にしたお前は、




金色の魔性だった。







「下忍の担当?勘弁してくださいよまったく。俺ガキ苦手です」

火影様に向かって無礼な!って、周りから飛んできた言葉の矢を俺は無視して、頭をかいた。

しかし、そんな俺の不遜な態度をものともせず言葉を続けるは三代目火影様。

「そうは言うな。お前に任せたいのは下忍の育成以上に、ある少年の護衛じゃ」

「護衛?」

「うずまきナルト」


頭がタイムスリップして、見事現代に帰還を果たすまで約五秒。

「―――もう12歳か」

「よう覚えてたな…当然か」



“当然”


それは、四代目が死んでから十二年だからな、と三代目は思ったんだろうけど。

俺はそういう理由で覚えていた訳ではなかった。


あの金の子供は俺自身が思っていた以上に、俺の記憶に強く留まっていたようだ。

自分でも意外だけどさ。

まあ、そんな問答の末、俺はナルトの担当上忍を引き受けることになった。


噂ではアカデミーのおちこぼれ。

だけどもう一つ、俺は暗部の後輩経由で噂を耳にした。

火影直属の無敵の暗部が、実はあのナルトだっていう、暗部や一部の上忍達にまことしやかに囁かれる、まるで都市伝説じみた話。

さて、真実はどんなもんかなと、俺は興味本位でアカデミーへ覗きに行った。

しかし、すっかり曜日の感覚を失っていた社会人な俺は、アカデミーの鼻っ面まで来て、すっからかんな教室見るまでは、その日が閉校日だっつーことに気づかなかったっていう、間抜けっぷりを見事に孤独に披露してしまった。

「はあ、かえろ…」

木の上でそう呟いて、踵を返そうとした瞬間俺の研ぎ澄まされた聴覚が、奇妙な音をひろった。

「んっ…はぁー……せんせぃ気持ちいい…」


なんだ、この艶めいた少女の声は…



俺は声のする方向へ動いた。

そこで見たのは、教室のカーテンに巻かれながら、見覚えのある男に抱かれる、ビスクドール。

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