04

――ゆっくりと意識が浮上する。
なんだか身体がフワフワするが、死んだんだろうか・・・?
それにしては頭が重い。
無い気力を振り絞って目を開けると、そこは一面赤だった。

「・・・は?」

否。
人が居た。
燃えるような赤い髪に白い肌、筋肉質な体。その背中から生える、蝙蝠の様な翼。
人間に翼が生えるとは聞いた事もないし、見た事もない。

「・・・あぁ、起きたか?」

どれくらい呆けていたのか、急に話しかけられて文字通り飛び上がった。
そんな俺を見てクツクツ笑っていた男が発した言葉で俺は再び固まる。



「人間になっても髪色は濃紺だな・・・」
「・・・は・・・?え、どゆこと・・・?」

頭で思った事が人の言葉として出たのに更に驚く。

「何?!俺どうしたの?!喋ってんのっ?!」
「落ち着け」
「むぐっ?!」

パニックを起こした俺の口が掌で抑えられる。
その間もずっと目が合ったままで反らせない。
たっぷり数十秒そのままでいると、話しかけられる。

「落ち着いたか?」
こくん

「俺の話聞けるか?」
こくん

質問に首を縦に振って応えると、そこでやっと手が離れた。
それからソイツはぽつりぽつりと話し始めた。


ソイツの名前はユースタス・キッドだということ。
ここは地獄の更に下にある煉獄だという事。
ハロウィンを前にして煉獄の問題児が人間界に無許可で降りた事。
追っかけて処分した帰りに、俺を見つけた事・・・。
俺は覚えてないが、一瞬目が覚めた俺にユースタス・キッドが己の血を俺に舐めさせた事・・・。


「じゃぁ俺が人間になったのは、お前の血を舐めたから・・・?」
「まぁそうなるな。しかもただの人間じゃねぇよ」
「人間じゃないって・・・じゃぁ何だよ?!」



「ん〜・・・。人猫?」



疑問形で片付けられた己の存在意義に、思わず目を覆ってしまった。



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