そなたは一体何がしたいのでおじゃるか。
「なぁに、ちょいと・・・眠いだけです、よ」
言うてそなたはわらわの膝に厚かましくも頭をのせるのでおじゃる。
「・・・・・そなたは何がしたいのえ?」
「まぁ、いいじゃぁないですか・・・ここが一番落ち着くん、ですよ」
「そのような言い分でわらわの膝を図々しく枕に使うでない」
言うてみたけれども、「落ち着く」とは何ぞ聞くとや喜色満面にほころびてしまふ。
「・・・笑った」
「・・・・?何ぞや?」
「あんたの笑った顔、いと美しゅうございます、よ」
「ふ、何を言うでおじゃるか。ふふ」
膝の上の男の銀鼠色の髪を撫でる。柔らかな猫毛が指に絡みて、いとおしい。
男はわらわの下腹部あたりに鼻を擦り付けてもそり、もそりとじゃれる。
「嗚呼・・・いい匂いだ・・・」
「今日は随分とやや子のように甘えが過ぎるのではないでおじゃるか?」
「たまには宜しいでしょう・・・嗚呼、もう眠りますよ・・・」
男は深く眠りの底に落ちてたもうた。閉じた目蓋すらも艶めかしよぞ。
「つくづくおかしな男よのぉ」
わらわは身を屈め、その藤菫色の蕾にも似た唇に口づけた。
今日はやうやう暖かきかな。さように甘くわらわを惑はすそなた。
何だか幸せすぎて、少し気味が悪うおじゃる。