「のぉ、薬売りや。そなたはうなじがおなごの如く美しゅうな」
「そいつぁどうも・・・あんまり嬉しいもんじゃぁありません、けどね」
そう言ってそやつは苦笑いで肩身をすくめてみせた。
溜め息混じりに。
「おなごの妾からしてみれば大層羨ましゅうことぞ?」
「ほぉう?ですがおなごの魔魅はうなじで決まるもんじゃぁ、ないでしょうに」
「それはそうだがな。して、そなたは妾のどこに美しを感じるのでおじゃるか?」
「そうです、ねぇ・・艶めかしさ、奥床しさ・・・あとはぁ」
「あとは?」
「からだ」
「・・・・!」
「くく・・・照れておいでですか、おひいさま?」
こやつの癖。妾をからかう時は必ずこう呼ぶのでおじゃる。嫌なやつよの。
「照れてなどおらぬ。いきなりそのようなこと申すな、うつけもの」
「あぁ、すみませんねぇ・・・でも本当に美しゅう御座いますよ、瑠璃姫はん」
これも癖。妾を口説こうという時は必ずいつもと違う呼び方をするのでおじゃる。
「妾を抱きとうおじゃるか?」
「えぇ・・・今 無性に」
「・・・・よきにはからえ、うつけもの」
「その所存に御座いますよ・・・瑠璃姫」
言うて、男は妾の細首の後ろ、白雪色のうなじにねちょりと舌を這わせた。
かぷり
「あん」
「甘い声出しなさんな。歯止めが利かなくなりますゆえ・・・」
「は、歯をっ・・・立てないでたもれ・・・」
「そいつぁ聞けねぇで御座いますよ。あんたの首筋が悪いんです、から」
「くす、り・・・あ、ぅ、あ」
かぷり かぷり ぴちゃ ぴちゃ
体温が上り詰めて
今にものぼせてしまいそうじゃ
何と甘美で卑しい男よの