しんしんと静かに粉雪が舞い落ちる冬の夜。

「寒いでおじゃる」

「俺もです、けどねぇ」

「わらわは寒いのが嫌いぞ」

「そんなこと言われても、俺に雪を止めろとでも言うんですかい」

「よきにはからえ」

「出来る訳ないで御座いましょう」

「…使えぬ男よの」

「そいつぁ、あんまりじゃないんですかい」

「…手が冷たい…」

瑠璃姫は自分の細く白い指を見つめた。先がかじかんで赤くなっている。

「痛々しいです、ねぇ…ほら、貸してご覧なさい」

薬売りはおもむろに瑠璃姫の両手をふわりと己が手で包み込んだ。

「…薬売り…そなた思わずして暖かよの」

「意外とって…随分と酷い言いよう、ですねぇ」

「あったかい…」

目を閉じてほくそ笑むその顔が普段は見れないからか、とても可愛らしく見えた。

「…白雪の…愛らしき、かな…こちの姫」

『この舞い降る雪のように白く可愛いらしい、俺だけの姫君よ』

「そのような詩歌を詠んでわらわを口説けると思うておじゃるか」

「いえね…ちょいと胸に浮かび上がっだけ、ですよ」

「…ふ、ふふ…安い男」

そうはにかんでみせる表情すらも、可愛いくて仕方がない。

体の底から、好きだ、好きだと湧き起こる、この思慕の念は鎖の如く身共を縛る。

「瑠璃姫…」

囁きながら頬を撫でれば、ぴくりと反応して、おずおずと見上げてくる。

「…」

「…」

「…すっ、するなら早くせよっ」

「え、あ。あぁすいませんね…」

何だろう。たかが口づけ如きで何を恥じらっているのだ自分は。

しかし今日はいつもより鼓動が高鳴る。牡丹色に染まった顔がとても美しくて儚い。

柔らかな唇が、犯してはならぬ聖域に見えた。

「…き、今日は…止めときますか」

「なっ・・・何故でおじゃるかっ」

「あ。え、と・・・今夜は冷えますしねぇ」

「それは理由になるのでおじゃるか」

「・・・もうよいでしょうぞ。さ、夕餉をとりましょう」

「薬売り!」

「お腹、減りましたよ・・・瑠璃姫の南瓜の煮付け、食べとう御座いますね」

「・・・ふん・・・わらわは我慢女房ではないぞえ」

「分かりました、分かりました。お楽しみはまた今宵の寝床で・・・」

くす、と口元で笑い、流し目を施せば、また牡丹色に染まり、照れた顔をする。

「・・・か、かぼちゃのにつけっ、作るぞえっ」

「くくくっ」

嗚呼可愛い。可愛くて可愛くて。今すぐ折れるほど強く抱きしめてしまいたい。

強がりも恥じらいも口付けも。何もかも、嗚呼何と可愛らしいのか。

甘く甘く甘く

白雪のように砂糖を舐めとったように甘い。

貴女さまを思ほゆえば、頭は甘さでとろけてしまいせう。








とも様と相互記念。こんな駄作で面目ないです。
お気に召されたら幸いです。とも様のみお持ち帰りOK。



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