あたしは恋やら愛やらの話に全くついていけなかったし、自分が恋するなんて微塵も思ってなかった、けど。


ここ最近は、ずっとリカが家に泊まりに来ていて夜中には笑うまでギャグを聞かされたり、誰が誰を好きらしい、みたいな恋愛トークも勿論聞かされて。…その内に、あたしは感化されちゃったのかもしれない。我ながら単純な理由だったなと苦笑する。




「ダーリン今日も
格好良かったわあ」


隣のベッドで、いつもの如く泊まりにきているリカはうっとりした目つきをしながらそう言う。呆れつつ、よかったな、と言って流すと、塔子最近何でそんな冷たいんや、と頬を膨らませる仕草をされたと思うと枕を抱き締めたままそっぽを向かれてしまった。


悪かった、と思う反面仕方ないじゃないかと思うようになってしまったのは、きっとこの虚脱感と、あたしが一之瀬に嫉妬している理由と同じなんだろう。


ねえ、リカ。あんたが楽しそうに教えてくれたような幸せな恋をするにはどうしたらいいの?だって、あたしはきっと他の誰よりリカのことを知ってるよ。一之瀬より、きっと、知ってる。恋してる時の女の子は可愛いと云うけど、一之瀬と一緒にいるときのリカは、他のどの時よりも、太陽みたいに煌々と輝いていてほんとうに、可愛いんだ。


「塔子?」


「!」


そんなことを考えているうちにぼうっとしていたらしく、あたしの顔の前でひらひらと手を振るリカとぱちりと目が合う。


「ご、ごめん、
どうかした?」


「どうかしたは
こっちの台詞や!
塔子、顔色悪いで?」


とあたしの額に手をやって、熱は無いみたいや、と言う。寝不足かも、あと少し考え事をしていただけだから大丈夫だと応えると、


「ほんまに?
悩み事やったらいつでも
聞くでな、恋愛なら尚更!」


だって、うちら親友やん?と言ってリカは優しく笑みを浮かべる。いつものさりげない優しさでさえ、胸がぎゅうと締め付けられる。くるしい。体調が早く良くなるように今日はもう寝よか、とリカに提案されて珍しく早めの就寝となった。でも、…だめだ。最近寝不足なのはギャグのせいでも恋愛トークのせいでも無い。あたしはただリカのことを考えていたから、いくつも、いくつも眠れぬ夜を越えたんだ。それでリカに心配されるなんて、本末転倒にも程がある。あたし、馬鹿だなあ。…こんな感情を抱いて毎日過ごすなら初めて出逢ったあの日にまた戻れたらいいのに…


好きな人なんかいないって、ずっと言ってきたけど、仮に愛してると告げたらもう二度と二人で笑顔には戻れないかもしれないってことが怖くて、弱いあたしは言えなかった。リカはあたしにとって好きな人であるけどそれ以前に大切な友達なんだ。今の関係を壊すなんて、リカを困らせるなんて、したくない。けれど、あたしはもうこの気持ちのまま作り笑いはこれ以上できないから。次の日の早朝にあたしはこっそりと家を出てがむしゃらに走った。リカのことほんとは、ほんとはずっと好きだった。いつだって愛し続けてた。あなたに、リカに届けたい気持ちを…伝えたくても伝えられないから、代わりに蒼い空へと囁いた。


「…これでもう、
この感情はリセットする。」


嫌になるほど、清々しい朝。
"初恋は叶わない"の意味を
あたしはこの身で痛感した。




こんなにこんなに
近くで見つめても
どうしてどうして
ただの友達なの?
どんなにどんなに
強く思っていても
伝えられない……
You don't understand.




I'm so in love with you.



*届かない意味もない告白

110113
(title空想アリア)
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Crystal Kayさんの
「こんなに近くで…」を
イメージして書きました^^//

これはきみのすきなうた様に
提出させていただきました!
では、読んでくださって
ありがとうございました。

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