「ぎゅうきー!」 本家の門を潜った瞬間、牛鬼は幼い声に呼ばれて足を止めた。 呼ばれた方を向けば、庭で小妖怪たちと遊んでいたらしい子供が、こちらに向かって駆けてくる所だった。 目の端で首無が、今日のお守り役は彼のようだ、会釈するのを認めながら、足元までやってきた子供の目線に合わせるようにしゃがみ込む。 「リクオ様。あちらで遊んでいたのではないのですか?」 「うん。でもね、ぎゅうきみつけたから。ぎゅうき、かたぐるましてー」 「はい」 請われるままに自身の肩に担ぎ上げれば、子供は声を上げて喜ぶ。 その様子が言われもなく嬉しくて、それでいて懐かしさも感じるようで、顔が綻んだ。 ああ、そうだ。 「ねぇ、ぎゅうき。くびなしたちのほうにいこうよ」 子供が名を呼ぶ度に温かなものが灯る。 「はい、リクオ様」 過ぎ去った日にも、子供の父親にも同じように肩車をしたと牛鬼は思い出していた。 いつの間にか穏やかな日々にも慣れて、時折こうして目の当たりにするけれど。 悪くない。そう、悪くない。 「落ちないようしっかり掴まっていて下され」 そして牛鬼は静かに笑んだ。 (10/01/12) 側近ズが交代でお守りをしていたらいい。 牛鬼は本家に来る度に肩車を請われていたらいい。 それを二代目が内心羨ましがっていたらいい。 ※ブラウザバックでお戻り下さい |