「ラクス」


彼に、彼の声に、名前を呼ばれることがとても好きだった。

たったそれだけなのに。それだけのことなのに。
全てを掠め取って、掬い上げて、私を引き上げてくれるから。
何度となく沈みかける度に、心地良い優しさと温かさをもって、私を受け入れてくれるから。
まるで全てを見透かしているかように、囁かれる声音は私の心を浚っていくから。
そんな貴方が憎らしくて、でもそれに勝る愛しさに敵いそうもなくて。
いっそのことこんな狡い女なんて突き放してくれればいいのにと思うこともあるけれど。
否。私が離れられないのだ。
その声をその体温をその心を求めてしまう。探してしまう。
こんなにも、こんなにも。
貴方を求めて、引き裂かれそうなくらい胸が苦しい。
息が詰まるほど愛しい。


抱き寄せられた身体に、腕を彼の背中に縋りつくように回した。
何よりも安堵する温かさと匂いに、目尻にはうっすら雫が滲む。


「ラクス?」

貴方は知らないでしょう?
どれだけ私がその声に心を揺さぶられたか、浚われたか。
救われたのかを。

「ラクス、どうかし」
「キラ」

今は何も言わないでと口に出す代わりに、名前を呼んで、左手で彼の唇を塞いだ。


「キラ」














「      」






I'm saved by your voice.
Always.To the gentle voice.









08/04/07
DESTINY/after Special Edition4



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