正直な所、殺してやると思ったことは本当だったし、実際殺したとも思った。

だけど、あの時差し出された手に応えたことも本当だったんだ。










いつか、
空を飛べるように

























「すごいっすね。あれは」


ザフトの面々と合流した時のあの光景。
なんというか、驚いた。人前で躊躇いもなく抱き合うような人には見えなかったから。

「そうだな。俺も少し驚いた」

「少しじゃないですよ。なんていうか、そうは見えなかったんで」

目線の先には、仲睦まじく話をしているキラとラクスがいる。
その身に纏っている空気はとてもこれからプラントを導いていこうとする者には見えない。

「そのうち分かるさ。これからは俺よりもお前の方が触れる機会が多くなるんだ」

「そう、ですけど」

「これからもっと知っていけばいい。キラのことも、ラクスのことも。聞けば答えてくれると思うぞ」

まぁ、はぐらかされるかもしれないし、それがお前の求めてるものかどうかは分からないがな。
時間はあるんだから、焦らずにいけばいい。
そう言ったところで、アスランはイザーク隊長に呼ばれて行った。

焦らなくていい。
それはアスラン自身にも言い聞かせているような気がする。
そしてたぶんそれは気のせいではないのだろう。



まだあの人とどう接したらいいのか分からない。

ザフトに戻って具体的にどうしたいのかも分からないし。
それが本音だ。
あの人が、すごい人だとは思うし、温かい印象もある。
きっと聞けばアスランの言うように、自分のことを教えてくれるのだろうとも、なんとなくだけど思う。
けれど、知りたいのはそういうことじゃない。
おそらくはもっと、本質的な部分で。
多少の会話から見えてくるものではない、そんな部分で。

だからこそ、ちゃんと話してみたいと思ってはいたし。
あの人が上司になったのは好都合なのだけど。


そう、今回の新議長就任で、プラント上層部もザフトも大幅な改変、人事異動があった。
戦後、欠けた人員を火急に埋めなければならないほど情勢が混乱していたためだ。
その人事異動で、どういう巡り合わせなのかキラ・ヤマトが直属の上司になった。

話してみたいと思っていたから、願ってもないことだけど。
まだ少し、戸惑っている。




俺はこれからあの人の側で、何を見つけられるのだろうか。


何かを見つけられたら。
何かを掴めたら。






















『一緒に戦おう』


あの時の言葉が頭の中で繰り返し鳴っていた。







07/10/11
DESTINY/after Special Edition4

色々妄想はすれど、何度となく銃を向けあった同士。すぐに打ち解けられるような簡単なものではないと思っています。



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