ああ、最悪だ。最低だ。
今日は厄日だろうか。
なんだってまた、よりにもよってコイツなんかに。
そうだよ。時間よ数分前の俺に戻して、あの人生で最低最悪の発言を無かったことにしてくれ。
そんな予定じゃなかったのに。





「今のは忘れてくれ」

「はい?」

「いいから、忘れてくれ」

「ちょ、返事くらい聞いて下さい!」

「んなもん聞かなくたって分かる」

「そんなの聞いてみなければ分からないじゃないですか!」

…こいつは。
常々人のことを、他人の気持ちを考えていないだの、最低だの、さんざんに言うくせに。
自分だって考えていないじゃないか。
分かりきっている答えを、改めて本人から聞かされることほど辛いものはない。
いや、それでいいと思っていたから辛くはないが。
少しだけ、こいつの声が煩くて、耳障りだ。

「あー、少し黙れ」

「黙りません!好きなんです!」

「へぇ、そう。……………は?」

「…だから、ハルは獄寺さんが好きなんです!」

間が空いた。
現状に理解が追い付かない。
後から思えば、あの時の自分は相当酷い顔をしていたに違いない。
その言葉は明らかに自分に向けられていたものではなかったはずなのだ。

「は?お前今なんて…」

「だから、そうなんです!女の子に二回も言わせる気ですか!?」

高らかに宣言をするだけして。
理解の範疇を越えた先で、勝手に叫んで。
やっぱり獄寺さんは最低です!と言い残してものすごい勢いで走り去って行った。
あっという間に遠ざかっていく背中。

理解するための僅かな時間すら、どうやら与えてくれないらしい。
こっちは何かの冗談としか思えなかったのに。
だってそうだろう?
っていうか今、最低とか何とか言っていなかったか?
意味が分かんねぇよ。
あーもー、

「くそ、」



もう随分と小さくなってる人影に追い付く為に走り出した。
とにかく今はあのアホ女を捕まえるしかないようだ。







放課後を全力疾走する










08/05/06

売り言葉に買い言葉的な勢いで、好きだと言ってしまった獄寺くんです。


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