ハラハラ舞う雪のようだ。


辺りに充満する鉄と硝煙の匂いの中でそんなことを思った。
自分で撃った相手の身体から飛び散る、雪とは似ても似つかない色を見てそう思うなんて。
自分も大概イカれているけど、でも別にそれはどうだっていい。
雪のようだと思ったから、思ったのだ。

彼女にそれを伝えると。
きっと赤い雪も綺麗よ、と違う方向から答えが返ってきた。
それもどうなのだろうと思うが、それはいかにも彼女らしい答えだった。
肯定でもなく、否定でもない。
思ったことをそのまま口にしただけなのだ。
それがまた心地良いくらいに。

遠くで僅かに身動いだ頭にさらに数発銃弾を撃ち込んで、今日の仕事は全て終了した。
後ろの彼女の方へと振り向けば、どうやら彼女も終わったようで服についた埃を払っている所だった。
怪我をした様子はないのでほっとする。
もちろんそれは自分がさせないし、彼女が敵わないような相手でもなかったけれど。


「凪、帰ろう」

「うん」


後に残る無数の屍の中で、僕らは変わらずいつも通り。
明日には、飛び散った赤い血を雪と思ったことなど忘れているだろう。

いつのまにか降り始めていた真っ白な雪が、明日の朝には消えてしまうように。

あくまで些細な日常の一部でしかないから。
喩えそれが人から非日常と呼ばれるものであっても。





















「恭弥、」
「うん?」
「雪、積もるといいね」




「……僕は嫌だよ…」





















07/12/11



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