パソコンのキーボードを叩く音を聞きながら、読んでいた本を閉じた。
それと同時に小さな欠伸が漏れる。

「…眠いの?」

視線がわたしに向いたわけじゃない。気配で気付いたのだろう、投げかけられた問いに大丈夫だと平気なフリをした。
それは嘘で。本当はとても眠かったけれど。
でも、恭弥がまだ仕事をしてるのに眠いとは言いたくなかった。
それと、理由はもう一つ。
言いたくないから強がってみたのに、優しい彼は「強がり言わずに先に寝てなよ」なんて言う。
見透かされてるみたいだ。
だったら、最後まで見透かしてくれたらいいのに。


「大丈夫、待ってる」

「まったく、君も強情だね」

「………だって」

「だって?」

だって、それは。




「…恭弥が隣にいてくれないと眠れない…の…」


困らせてしまうから言いたくなかったのに。
最後の方の声が自分でもしぼんでいくのが分かる。
ホントにこんな年になって何を言っているのだろう。
子供ではもうないのに、一人だと眠れないだなんて。

「またそれは、随分可愛いことを言ってくれるね」

え?
そう言った恭弥は少し思案しているような顔をして、それから。

「分かった。…少し仮眠をとろうかと思うんだけど、一緒に寝てくれる?」

なんて言ったのだ。
ああ、本当に彼はわたしを動かすのが巧みなんだと思う。
それならわたしが断れないのを知ってて言うのだから。
優しくてずるい人ね。
でも、






「うん、もちろん」



一番ずるいのはわたしだわ。













となりにいないと夜も眠れない











07/12/07

そういう所が好きよ。



髑髏誕連作そのA


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