ピピッ。
高めの電子音が鳴って、今の彼の状態を告げた。

「…39度5分」

どう考えても高熱だった。
見た目からしても、明らかに体調不良だというのが分かる。
それなのに彼ときたら何でもないかのように、いつも通り仕事をしていたのだ。
顔は熱を持っていたし、どことなく焦点もあっていなかったというのに、大丈夫だと頑なに仕事を続けていて。
そうしたら案の定倒れかけ、今はさすがに堪えたのかベッドの中だ。

体温計を片手に顔を覗き込む。

「だから休んで、って言ったのに…」

「…いいじゃない。今は休んでるんだから」

本当は良くない。
けれど話すのも辛そうなので、あえて言わなかった。
彼なら、反論してくるのが目に見えている。素直じゃないのだから。

「欲しいものとかない?あ、お水か何か飲み物を持ってくるわ」

そう立ち上がると、すっと袖を引かれた。
毛布から腕だけが出ている。

「恭弥?」

「居て」

恭弥の言っている意味が分からなかった。自らそんなことを言ったことなんてなかったから。

「此処に居て」

「でも、」

「いいから、側に居て…」



驚いていると、照れたのかそっぽを向いてしまう。
なんだかその様子がとても可愛くて、とても愛しくて笑ってしまった。

滅多にないことに、風邪に少しだけ感謝しつつ、早く治るようにと彼の手を握りしめる。
握り返された熱に再び愛しさを覚えながら、わたしはさらに笑みを深くした。














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07/12/25

左手と左手を繋いで。



髑髏誕連作そのC


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