『雲雀さん、宅配便でーす。サインお願いしまーす!』


休日の昼下がり。
前日までの仕事から解放されてつかの間の穏やかな午前を過ごし、簡単なランチを済ませ食後のコーヒーを楽しんでる時だった。
覚えもない小包が届いたのは。
首を傾げながら、差出人欄を見やれば、

『父』

とだけあり、雲雀は反射的に投げ飛ばさなかった自分を誉めた。
包みが潰れるのはいっこうに構わないが、落ちた場所が悪くて部屋の物が壊れたり汚れたりするのは困るのである。
おかしい。
これはおかしい。前にも似たようなことがあったが、教えもしていない住所にどうして小包が届くのか。
相変わらず他に何も記されていない伝票に、苛立ちを覚える。
着払いで送り返してやろうにも住所はなく、わざわざ探らせるのも面倒くさい。
貴重な人員と時間の無駄でもある。
前回小包が届いてからすぐさま引っ越し、今度は沢田にすら教えず、各方面にも知られないよう手を回したというのに。
一体どこからここの住所を入手したのか、再会してからこちらあれが何をしたいのかがさっぱり分からない。分かりたくもないが。
裏の世界の情報網を侮ったということだろうか。いや、そんなはずはないだろう。もしそうだと言うのなら自分自身に腹が立つ。
しかしそれはあり得ないのだ。
とりあえず、こんなことに時間を使うのは酷く勿体ない。
せっかくの休日を台無しにしてくれた手の中の包みを、そのもの自体に罪はない、一睨みするとまたしてもキッチンのゴミ箱に投げ捨てた。
実は『父』以外にも文面はあったのだが、雲雀に気付かれることはなく、底へと落ちていった。

全く、腹立たしい。忌々しい。今すぐ引っ越してしまいたい。
だが、今日はこれから出掛けるのだ。
こんな気分で彼女に会うのは避けたいと思うものの、しかし苛立ちはおさまりそうもない。
それでも少しでも気分を和らげるため、テーブルの上から携帯電話を取り上げると、ワンコールで繋がる番号へと電話をかけた。

「哲。明日ここを引き払うから引っ越しの手続きをしておいて」

いや、今日出掛けてしまえばあとは戻ってくる必要などないのだ。
今夜は彼女のところでもホテルにでも泊まればいいのだし。
ああ、それがいい。
そう気付くと前言を撤回し、すぐ引き払うように告げる。
二つ返事で返される了承の旨に、僅かながら戻っていく機嫌を自覚して通話を終えると、出掛ける用意をするべくクローゼットの扉を開いた。
彼女に会う頃には幾分かマシになっていることだろう。






『父





おめでとう』










(10/05/05)

Happy Birthday KYOYA HIBARI!!

久しぶりに風雲親子。うっかり続いた引っ越しネタ(^q^)
急造で申し訳ない。
風は息子の誕生日にプレゼントを贈ってきたんですよ。あんまりイメージではないですが。
雲雀さんはこのあと髑髏ちゃんとでぇとです^^



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