「それは」

「僕の息子だよ」


いたって普通になんでもないように告げれば、ぱちくりとリボーンは目を見開いた。







贈るもの、残すもの












「ああ、久しぶりだね、リボーン。相変わらず元気そうだ」

「お前は、相変わらずムカつく顔をしている」

「そういう所も変わらない」

膝の上に小さな温もりを抱いて、旧知の友人を迎えた。
久しぶりに会ってもお互い変わる所もなくて笑みが漏れる。
たぶん一生このままなのだろう。
ああ、でもそういえば。これを会わせるのは初めてだった。
僅かな重みのかかった膝の上を見やれば産まれて間もない自分の息子が眠っていて、自然とリボーンの視線もそこへ向く。
息子だと告げた時の表情が彼らしからぬもので、噴き出してしまい睨まれたのは、玄関先で出迎えた時だった。
鳩が豆鉄砲をくらったような顔、というのはああいう表情なのだろうか。
そう言えば今度は鉛弾が本気で飛んできそうなので止めておいた。
さすがに自分の家で銃撃戦は勘弁願いたい。
第一此処は住宅地なのだ、近所迷惑にも程がある。

しばらく世間話という名の軽口をお互い叩き合って、間が開いた瞬間だった。
息子の髪を梳いていた手を休め、漂わせていた視線をリボーンに向けた時、珍しい顔を見た。
今日は何やらそんな彼を見てばかりだなぁなんて些か暢気になってしまうのは、やはり自分が全てを決めてしまっているからに違いない。

「………良かったのか?」

気遣うような、心配するような色を含んだ眼差しで。
君が泣きそうな顔をする必要はないよ、リボーン。

「何が?」

「…はぁ、お前な」

リボーンが言わんとしていることは分かる。
彼も僕ももうじき人柱としてこの身を捧げることになるのだから。
呪いを、業を、この身に負う。
死にはしないだろうけれど、恐らく再び息子をこの腕に抱くことはないだろう。
つまり、それだ。

だが。

だが、僕が息子との時間を犠牲にすることで、息子の生きる道を護れると言うならば、構わないと思う。
なんて傲慢な愛か。
まさかこの僕が、数多の命を奪ってきた僕が、いっぱしの親のような感情を持つことになるなんて思ってもいなかったけど。
これが、今の素直な気持ちで。
近々やって来る別れの時を悲しいとは思わなかった。

リボーン。
やさしいね、きみは。




「…はぁ。…お前が決めたことだ。俺は何も言わねぇ」

「そうだよ。これは僕が決めたことだからね」

誰にもその意思を阻むことなんて出来やしないし、僕が一度決めたことを覆すこともない。
それは彼にもよく分かっていることのはずで。
相変わらずの頑固者め。
そう諦めたような、呆れたようなため息と共に吐き出された言葉が何よりの証しだった。

「しかし、可愛い盛りを見れないとはな」

「何言ってるの。今でも十分可愛いじゃない」

「…親バカ」

「何とでも」

何と言われようとも抱く温もりが可愛くないわけがない。
言い切った僕に、辟易して嫌そうに眉を顰めたリボーン。
そしてもう一人。
膝の上で熟睡していた子供が、目を覚ましあうと声を上げた。



「…そういえば聞いてなかったな。子供の名前は」












「恭弥」


愛し子の名前。
とてもとても、温かく呼べたと思う。













良い名だろう?リボーン。















(09/05/22)

すみません!
夢を見過ぎましたぁっっ(スライディング土下座)
なんという捏造。なんという別人具合(゚言゚;)クワッ

風が子雲雀をあやしてる図を想像したら、アルコバレーノになる?前の彼ら(リボ様とか風とかラルとか)が過り、こんな話が浮かんだであります。
捏造ばっかですみません…



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