「ほら、ちゃんと髪乾かせよな」

わしゃわしゃとバスタオルで髪を拭かれた後、ドライヤーの熱風が襲った。
認めたくはないが、いや認めてはいないが、自称僕の家庭教師を名乗るこの男は僕を何歳だと認識しているのか。

「貴方、僕をいくつだと思ってるの」

「何歳になったって恭弥は俺の可愛い弟子だぜ?」

「バカじゃないの」

ああ、会話にならない。帰りたい。そんな所で凹まれても鬱陶しいだけだ。
これとの任務を組み立てた沢田にあとで文句を言ってやろう。
そうだ、それがいい。
話が通じるだけまだ沢田の方が可愛いげがあるのだ。

「相変わらず細いな。ちゃんと食べてるか?」

「うるさい。もういい、乾いたでしょ」

「ダメだって。恭弥はすぐ風邪を引くだろ」

そしてこれみたいに、くどくどと煩くもない。…幾分かの差ではあるけれど。
というか、どうしてこの男は人の部屋に勝手に入り込んで、当たり前のように保護者面をして、堂々と居座っているのか。
用意された自分の部屋に戻ればいいのに。
そもそも部下がいなければまともな生活が送れないくせに、人の世話をする前に自分をどうにかしたらいい。

ごおぉぉ、というドライヤーの音と熱風がまだ止まない中、雲雀は全て無視を決め込みさっさと眠りに就くことを選んだ。

「お、おい。恭弥!まだ終わってねぇって!」

「もういいから出てってよ。邪魔」

最後はなげやりにトンファーを投げ付け、ベッドに潜り込んだ。






そんな仕事明けだからだろうか。この上なく今の状況が癒しだと思った。
話が通じる。余計な会話がない。
かといって気まずいわけでもなく、すっかり寛いでいた。

「どうしたの?恭弥」

「なんでもな、い………!」

そんな中で、見慣れたはずの光景に微かな衝撃を受けたのは、返事をして数秒後のことである。
シャワー室から出てきたばかりの彼女の頬は赤く上気していたけれど、タオルに覆われた髪は冷たく湿っていたのだ。

「そう?それで話の続きなんだけど、」

「髑髏」

「うん?なぁに」

今まで同じ光景を何度も見てきたはずだった。しかし。
ああ、確かにこの季節はまだ、髪を濡れたままにして会話を続けるのは良くないかもしれない。
彼女の姿を見れば、そう思えて。かなり癪だったけれど、それはそれは癪だったけれど。真似てみることにした。
過保護だなんだとあの男には言いながらも、自分だって彼女に対しては大概過保護なのだ。
手招きをして呼び寄せると、そのままソファーに座らせる。
彼女が突然のことに呆けてる間に準備したドライヤーとブラシを一度脇に寄せ、覆っていたタオルで丁寧に水気を落として。
わしゃわしゃと髪を弄りながら、低温でドライヤーをかけた。
指が、彼女の細く柔らかい髪を通っていく。

「ふふ、どうしたの?ディーノに何か言われた?」

「…別に。嫌ならやめるけど」

「ううん。嫌じゃない。少し擽ったいけど、気持ちいいわ」

「なら、大人しくしてて」

図星を付かれて、面白くなかったけれど。何やら少し悔しい気もする。
笑っている彼女を見たらどうでもよくなり、まぁいいかと髪をとかす為にブラシを手に取った。



それから、彼女の髪を乾かすのは彼の役目になりました。











―――ねぇ、いい加減その髪型やめない?
―――どうして?
―――(六道とお揃いなのが気に食わないからだよ)











(09/05/05)

誕生日には全く関係のない話だけど、雲雀さんハッピーバースデー\(^O^)/

10年後くらい。ディノヒバと見せかけて雲髑。
雲髑は同棲しているわけではなく髑髏ちゃんが泊まりに来てるだけなのです。
しかし、相変わらず雲雀さんが別人なのである。






(某様にこっそり捧ぐ)


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