未来 | ナノ


未来

 ほんのわずか空を震わせる振動に、膝を抱えて座り込んだティスは静かに身を任せていた。
 世界を揺るがす地鳴りの音は変わらず聞こえるし、張りつめる圧迫感は時を追うごとに強くなっているような気もする。しかし決して不穏さは感じられず、むしろ包み込まれるような心地よささえ感じられる。
「……静か、だな」
 すぐ側で両手を後ろについて足を投げ出しているリーンが、ぽつりと呟いた。
「そうだね」
 頷いて、ティスも囁いた。二人の声は、音を立てて虚空へ落ち、そして消える。響きを残すことなく、余韻すら伴わずに素っ気なく。
「これから、どうなるんだろうな」
 明日の天気を気にするような素振りで、リーンが空を見上げた。実際ここはアルトクリスタリウムだったから、本物の空は見えない。幻の蒼穹が、目まぐるしく回転し続ける魂の向こうに映し出されているだけだ。
「……わからない」
 ティスは、小さく首を振った。決断を下すのは、母だ。自分は――自分とリーンは、彼らの想いを届けただけ。生まれ変わろうとする世界の兆しを、母に報せただけだ。
「また同じことが繰り返されるか、それとも彼らの願いが叶うのか……。それを決められるのは、母様だけ」
 でも、と、ティスは自分のつま先を見つめていた視線を上向けた。
「母様なら……きっと彼らの願いを聞いてくれると思う。だって、初めてなんだもの。初めて、彼らが母様に願ったことなんだもの」
 世界の礎を、理を、ありとあらゆるものの存在を造り出し、導き、そして無へと帰していた、無慈悲で冷酷な管理者。しかし、そうでありながら反面、『彼ら』には溢れんばかりの愛情を注いでいるようにも見えた。何億もの繰り返しの中、例えばそれが彼女の目的を果たすための些細な布石であったとしても。
「……そうだな。俺もそう思う」
 リーンが言うのと同時に、ふわり、フード越しの頭の上に柔らかい感触が降ってきた。何度か優しく叩かれて、それがリーンの手だとティスは知った。
「あいつらが託して、ティスが届けたんだ。マザーなら必ず……」
 労わるような手の動きが、ティスの心の裏側を繰り返し撫でる。視界を熱く滲ませる涙は、何のための涙なんだろう。喉の奥から迸りそうな声は、何を叫びたいんだろう。ティスにはわからなかったけれど、それを引き出しかけているのがリーンの手のひらだということは理解できた。
 と、リーンの手が止まった。探るように、周囲に神経を研ぎ澄ませている。ティスにも、それが感じられた。じりじりと圧縮されつつあった空気が、一気に緩む気配。終末に向かって引き絞られていた弓が、とうとう放たれたような。吉兆か、あるいは――。
 頭の隅で繰り広げられる幻想に立ち上がりかけたティスは、すぐそこに時空の歪みを見る。溶けるように滲んだ何もない空間から、ゆらりとアレシアが姿を現す。
「マザー!」
 リーンが駆け寄る。ティスもその後を追い、そろってアレシアの前に立った。いつものように煙管を燻らせ、母は微笑んでいた。その微笑みが、しかし決していつものものではないとティスは思った。聡明で凄然とした、瞳の奥に冷酷さを伺わせる微笑みではなく、どこか寂しげな陰のある、それでも温かみのこもった不思議な笑みだった。
「彼らには……?」
 逢えたのだろうか。自分では届けきれなかった彼らの想いに、母は触れることができたのだろうか。確かめたいことは、数えきれないほどあった。しかし、口を突いて出たのは短いその問いかけだけだった。
 アレシアは、頷いてそれに応えた。細く吐き出された紫煙が、立ち上っていた別の紫煙をゆるりと消し去る。言葉はなく、それでいて言葉よりも滔々とアレシアの表情は物語る。彼らとの最後の邂逅が、この世界の行く末を決めたのだ、と。
「……これまで、一度だってそうしたことはなかったのだけれど」
 おもむろに目を伏せ、アレシアは長い息を吐き出しながら呟いた。
「こうして終わりを迎える時になって初めて、ずいぶん長い時を繰り返してきたのだと思ったわ。あの子たちの想いに耳を傾けたのも、本当の意味では初めて」
 自嘲するように肩をすくめるアレシアに、ティスとリーンは顔を見合わせた。まるで、もっと早く、もっとたくさんそうするべきだったと悔いているようなアレシアを見たのは、今までの繰り返しの中でも初めてだ。これまでに一度でさえあり得なかった色々なことが積み重なって、新しい世界は産声を上げるのかも知れないとティスは思った。
「……ねぇ。最後に、少し聞かせてくれる? あの子たちが何をしてきたのか。どうやって、最後を迎えたのか」
 アルトクリスタリウムを取り巻く数多の魂たちに視線を投げ、アレシアが訊ねる。その様はまるで、その中に彼らの面影を探しているかのようだった。今この時に至るまでに道のりは、そのまま彼らの生きた証だ。それを知りたいと願うのは、母自身の最後の望みなのだろうか。
「それは、俺らに聞くよりも……なぁ?」
 そう応えたリーンは、そのまま同意を求めるようにティスを見た。彼らが光であるなら、自分たちは影。しかし、影は所詮影にすぎなかったのだ。彼らが真に何を思い、何を感じ、積み重ねてきたのかのすべてを知ることはできない。それでも。
 二人がいる、とティスは思う。自分やリーンと同じ、一度は彼らと同じ存在として造られながら、いつしか運命の輪から弾き出された二人が。私たちと同じ、彼らの影。しかし、完全に同じであるといえるわけでもない。影でありながら光の中に在り、彼らと同じ時を過ごした二人なら。
「ええ。私たちの代わりに、彼らの側にいた二人に聞いてください」
 リーンに頷き返しながら、ティスは言う。
「本当に彼らの側にいて、彼らを近いところで見てきたのはあの二人ですから。二人のたどった道筋は、そのまま彼らの道筋でもある。行き着いた場所も、抱き続けた想いも……」
「……そうね、そうかも知れない」
 ティスの言葉に耳を傾けていたアレシアが、そっと目を伏せて呟いた。噛みしめているのは、何に対するどんな思いなのだろう。と、静かに佇んでいたアレシアの姿が、揺らぎ始めているのに二人は気づいた。顔を上げ、自分たちを見つめているその瞳が、慈しみ深く細められているのにも。
「……母様?」
「時が、来たようね」
 アレシアが視線を移した遥か遠く――実際には存在しないどこか別の次元――、閉じられていた世界が開かれるのだろう。その兆しが、強い波動を伴って伝わってくる。
「お別れよ。私の子供たち」
 波紋に脅かされた水面に映る影のように、アレシアが歪む。流れ込んだ光に塗りつぶされるように、その姿が遠ざかる。集められた魂が吸い込まれようとするその渦の中心で、アレシアは微笑んでいる。
「マザー!」
 駆け寄って伸ばしたリーンの手が、拒まれるように何かに弾かれた。凄まじい力が、母と自分たちの間に横たわっているのを、ティスは感じていた。母は、このままこの世界から消え去ろうとしている。きっと、あの二人に彼らの最後を尋ねたその足で。
「母様! 私たちは……私たちも……!」
 共に連れて行って欲しい。そう続けようとしたティスの言葉は、再生するために、一度破壊されようとしている世界の崩れる音にかき消される。吹き荒れる風に煽られた身体をすぐ後ろで支えたリーンも、声を張り上げた。
「今さらだろ? 俺たち、ずっとマザーと一緒だったんだ。今になって置いてかれるだなんて……」
 怒りのようにも、途方に暮れるようにも聞こえる乾いた笑いを含んだリーンの声が、アレシアの瞳にうっすらと哀しみのような影を落とす。そんな自分に戸惑うように、アレシアは小さく首を横に振り、独り言のようにひっそりと囁いた。
「人と異なる身として造り出された私にも、人としての心が生まれるとは……。本当に、気づくのが遅すぎたわね」
 けれども、と嘆息して顔を上げたアレシアの瞳に、もう憂いの色はない。
「私が導くべき結末にたどり着けなかったとしても……それが、決して必要のない感情だったとしても……」
 母が何を言わんとしているのか、ティスにはよく解らなかった。ただ、寂しげに霞んだ、それでも晴れやかな笑みを湛えた母の瞳が自分たちを見下ろしている、それだけが鮮烈に胸を突き刺す。
「……もう、一緒に連れて行ってはもらえないのですね」
 そう悟った心が、独りでに呟いた。こぼれ落ちた言葉を追いかけるように、涙があふれて流れる。そうして、ティスは気がついた。理由もわからず込み上げていた涙も、迸ることを求めて喉の奥にわだかまっていた叫びも、これを予感していたのだ、と。
「……あなたたちも、決めるといい」
 はっきりと肯定する代わりに、アレシアは確固たる強さの滲む声でそう言った。それを願うことは、もはや自分の望むところのことではない。そうすることよりも、あなたたちに残された道はもっと他にあるはず。そう諭すように、静かにアレシアは言葉を重ねた。
「あなたたちの決断を助けるだけの力を、置いていくわ。どんな結末を望んだとしても、それを叶えらえるだけの力。私からの、せめてもの餞として。だから……」
 そうしている間にも、次元の歪みはどんどん広がっていく。アレシアと、自分たちのいる場所を残して、世界が混沌へと飲み込まれようとしている。しかしそれは、無へと還るためのものではない。彼らが望んだ、新しい世界の誕生の礎なのだろう。その産声に紛れて、アレシアの声が遠く響いた。
「自分自身で感じて、考えて、そして決めるの。あの子たちと同じように、進むべき道を」
「母様!」
 庇うように掲げられていたリーンの腕をかいくぐって、ティスは追い縋ろうとした。そうしろというのなら、従う。しかしせめてもう少し、消えずに側にいて欲しい。別れはあまりにも突然で、伝えたかった言葉も、尋ねたかった想いも、何一つ届けられずに胸の真ん中にぶら下がったままだ。
「私は……私たちは……!」
 伸ばした指先が、母に届くかと思われたその瞬間、眩い光がティスとリーンを取り巻き、そして爆ぜた。見えない壁に阻まれた、それこそ別の世界のことのように、しかしその衝撃は二人を襲うことはない。轟音、風圧、閃光。そして、嘘のような静寂。ティスの踏み出した足が虚しく床に沈むころには、アレシアの姿は跡形もなく掻き消えていた。


 それから、どれだけの時が過ぎただろう。
「ずっと……ずっと聞きたかったことがあったの」
 膝からくたくたと頽れながら、ティスは母が居た場所に視線を彷徨わせた。口を突いて出る、もう受け取る相手のいなくなってしまった言葉と同じに、涙はただこぼれ落ちる。
「私たちは、母様にとっていい子供だったのかな? 私がそうだったみたいに、母様は私を愛してくれてたのかな?」
 自分をこの世界に産みだした者、そういう意味では母は紛れもなく母であった。しかし、ティスはいつしか気づいていた。自分は、母の腕に抱かれたことがない。その手で頭を撫でられることも、そのぬくもりに包まれて眠った記憶もなかったのだということに。例えば、どの繰り返しの時にも、幼い頃から母と過ごす時間が多かった彼らのように。
 所詮、自分は捨てられた座なのだ。この世界の螺旋から、最初に弾かれた存在。この世界を廻す仕組みには、必要ではないと判断された歯車。『彼ら』とも、『二人』とも異なるもの。
 この涙は、そんな自分を憐れむためのものなのだろうか。この気持ちを、気の遠くなるほど長い間打ち明けられずにいた苦しみ故なのだろうか。それなのに、ずっと触れたくて、しかし最後までそうしたかったと訴えることさえ叶わなかった母の手は、もうどこにも存在しない。
「……ティス」
 ため息交じりのリーンの重い声が、自分の嗚咽の向こうから微かに聞こえた。怒っているのだろうか、それとも呆れているのだろうか。世界が、人の世の歴史が大きく変わろうとしているこの時に、そんなことを考えているだなんて。
 しばらく岩のように押し黙った後、リーンが静かに口を開いた。
「……俺たちが過ごしてきた時間ってのは、『時間』って名前で呼ばれることが正しいことなのかわからないくらい、長くて重かったような気がするんだよな」
 少なくとも俺は、と噛みしめるように口を開いたリーンの左手が、ぐっとティスの右手を握った。そうして初めて、ティスは自分がいつの間にかリーンと手を繋いでいたことに気がついた。
「ずっと一緒にいた。いつだって側にいた、あの人は。ティスの次ぐらいに、だけど。でも正直、俺にはあの人が本当のところは何を言ってるのか、わからない時のほうが多かった。今だってそうだ。ずっとあの人の言う通り、俺たちは動いてきただろ? それが今になって、自分でどうするか決めろだなんて……」
 意味わかんねぇよな。
 そう言って、弱く笑うように吐き出されたため息と同じ種類の震えが、微かに握られた手のひらに伝わってくる。その手を、腕を伝って、ティスは顔を上げてリーンを見上げた。泣いているのかも知れない、私のように。そう思って。
 しかし、ふり仰いだリーンの唇には、淡い笑みが浮かんでいた。そして同時に、ティスは気づく。涙に曇ったせいで見えなかったまわりの景色が、声よりも言葉よりも雄弁に、自分に気づかせようと光を放っていることに。
「だけど……これだけはわかる。あの人が、俺たちに未来を残していってくれたってこと。俺たちが、未来に目を向けるための力を」
 片膝をついていたリーンが、そっと立ち上がった。繋がれた手を引っ張られて、ティスも立ち上がる。その動きを追うように、自分たちを取り巻いていた光が帯のようにたなびいた。
「未来への、力……?」
 涙でひしゃげた声で呟けば、リーンが頷くよりも早く、光は瞬きを繰り返す。深く、静かに、そして揺るぎない強さをもって。それは、惑うことなくただひたすらに望む世界の結末を追い求めていた、母の強かさそのもののようだった。それはそのまま、最後の母の言葉へと姿を変える。
 ――自分自身で感じて、考えて、そして決めるの。あの子たちと同じように、進むべき道を……。
 あたたかい、とティスは目を細めた。光は、優しく柔らかく自分とリーンを照らし、包み込んでいる。労り、励まし、勇気づけ、わずかに叱りつけるように厳しく、自分たちを促しているように思えた。
「俺にとっては、意外過ぎてそっちのほうがびっくりなんだけど」
 お前が気づかないなんて、と、未だしゃくりあげながらも泣くのをやめたティスの頭にぽんと手を置いて、リーンがおどけるように肩をすくめた。対の存在を為すように、いつも自分につき従っていた弟のようなリーンが、今だけは兄のように眩しくティスの目に映る。
「ティスにも、感じられるはずだ。あの人は、ティスに生きろって言ってるんだ。誰の命令でもなく、ティスの意思で。そのための力を残していってくれたあの人が、ティスを愛してないだなんて、あるわけないと思わないか?」
 簡単なことだと、リーンは不敵に微笑んで言いきった。その強さが、吹き渡る風のようにティスの心を解かしていく。未来を、生きる。それが、母の望んだこと。そこには、求め続けた母からの愛が溢れんばかりに輝いている。
 触れることは叶わなくても、言葉で与えられることはなくても、そして普通とはかたちがことなっていたとしても、それは紛れもなく母の愛なのだと。そう信じることは、自分にとってこの上もなく都合のいいことなのかも知れないと、わずかに逡巡する気持ちがティスの心をちくりと刺す。
 しかし、眩い輝きがそっと背中を押すのだ。迷うことはない、躊躇う必要もない。思うがままに、自由に。そんな母の声が聞こえたような気がして、ティスは涙の跡を拭って顔を上げた。その声に導かれ、自分の道を探すために。


「……どうする、これから」
 リーンが訊ねる。ティスが、少し考えてから答える。
「……未来は、この世界に初めて訪れるんだと思うの」
「どういう意味?」
 唐突に言われて面喰いながらも、リーンは先を促す。うっすらと上気し、微笑みを浮かべるティスの頬に、つられて微笑みながら。
「築き上げては、壊されて、その繰り返し。何度も何度も。だから、その先を誰も知らなかった。そういう意味で」
「……なるほどな。誰も知らない、新しい世界ってことか」
「うん。まっさらで、無垢で、生まれたての――『彼ら』の望んだ世界」
 その世界を生きようとする者を待ち受けているものは、決して平坦ではないだろう。今こうしている間にも、クリスタルの加護は人々から離れつつある。知らず、その恩恵を頼りに生きてきた人々は、その強大な力を失うのだ。
 辛く、険しい茨の道が続くであろうことを、ティスは思った。しかし、それにも代え難いものを人々は手にしたのだ。生まれ、自らの意思で生きる道を選び、そして死んでいく。ただ、消え去るのではなく、その記憶を、想いを、新しく生まれた命へと託して。
 だから、とティスはリーンを見上げた。
「私は、見届けたいと思う。『彼ら』の代わりに。この世界が、どんなふうに変わっていくのかを。そこに生きた人たちの、新しい歴史を」
 見届けたい。見守るだけだった今までよりも、もっと近くで。彼らの残した世界を、そこに生きる人々と触れ合って。きっと誰よりもそうしたいと願っていた、彼らの想いをなぞるように。
「……そっか。うん、いいな、それ」
 見届ける、と何度か口の中で呟いた後、リーンが笑って言った。ふと気づいて、ティスは訊ねる。
「リーンは、どうするの?」
「俺? そんなの、初めから決まってる」
 どうして今さらそんなことを、と、傷ついたふうを装って大げさに天を仰ぐ真似をしながら、リーンはティスの肩に手を置いてそっと引き寄せた。
「世界がどんなに変わっても、俺はずっとティスの側にいる。今までも、これからも。それだけは、絶対に変わらない」
 そう言って破顔するリーンに、ティスの唇も自然と綻ぶ。世界の理がどんなにその姿を変えても、変わらないものがある。それは、人の想いだ。受け継ぎ、繋いでいくと決めた彼らの想い、彼らが確かに存在したのだという証は、しっかりとこの胸に息づいている。
「……行こう、リーン」
 もう何度口にしたかわからない、その言葉をティスは呟いた。差し出した手は、すぐに握られる。力強く、あたたかく。リーンも、いつものように応えた。
「あぁ、行こうぜ」
 吹き過ぎていく乾いた風に誘われて、二人は空を見上げた。薄紅に染まった空は、世界の曙の色なのだろう。金色に薄くたなびく雲も、そこにかかる虹のような光も、神々しいまでに美しかった。



 こうして、二つの魂が解き放たれた。
 運命の螺旋から弾き出され、大いなる流れの中で見守ることのみをさだめられた二つの魂。
 世界が在るべき姿へと生まれ変わるその時に、彼らもまた在るべき場所へと還っていく。

 もう繰り返すことのない、有限の魂と肉体とで二人は歩み始める。
 それは、望んだ世界の行く末を、見届けられなかった兄弟たちのために。
 そして、のちに同じく解き放たれる別の二つの魂のために。
 母の意思に応えるために。
 何よりも、自分たちのために。
 自らの目と耳と心で、その道を選び取って。





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