interlude | ナノ


interlude

 静寂を突き破って、迷い子たちが叫び声を上げた。
 痛みに耐えきれず。
 恐怖に身を焼かれ。
 襲い来る絶望の濁流に押し流されて。
 まるで、切り裂かれた傷口から、とめどなく鮮血が吹き出すかの如く。

 その時、誰が予想できただろう。
 『死』という暗闇を、なおも光が照らすということを。
 光が導く先に、一滴の救いが彼らを待っているということを。
 その光は、他の誰でもない彼らから生まれいでるものであるということを。
 その光が、消えることなく人々の心に宿り続けるということを。

 やがて、身を寄せ合う迷い子たちのひとりが、歌を口ずさんだ。
 迷い子たちの母なる存在が、繰り返し歌い聞かせていたもの。
 寝つかれぬ夜、物陰に隠れて泣いた夏の日、ふとした瞬間浮かび上がる、忘れてしまったはずの誰かの影に怯えた、薄暗い雨の午後。
 彼は、幾度となくその歌に励まされ、慰められ、癒された。
 その記憶が、彼にそれを歌わせたのだろう。
 無意識のうちに、あの時の安らぎがここに訪れることを祈って。

 迷い子たちの叫び声が、はたと止んだ。
 ひとり、またひとり、そしてとうとう全員が俯けていた顔を上げる。
 その瞳に、未だ憂いは残されている。
 しかし、そこを覆い尽くしていた闇は薄れつつある。
 微かではあるが、紛れもない光の気配をかわりに宿しながら。

 そうして、彼らはふたたび歩き出す。
 それほど遠くない未来に迎えるであろう、最期の時の予感とともに。
 それでもなお、彼方の光を――その先にあるものを、めざして。






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