魔導院は、どこもかしこも同じような有り様だった。『だから』なのか、『なのに』なのか、自分たちは最後にたどり着く場所を教室に求めた。
歴史を感じさせる重厚な雰囲気の教室が、セブンは嫌いではなかった。そこでの授業も、休み時間の騒がしさも、戦渦の中で感じることのできる数少ない穏やかなものの象徴だった。
その日常を少しでも感じたくて、自分たちはここを目指したのかも知れない。今となってはもう、二度と戻らないものだと知りながら。
ぽっかりと口を開けた壁、空が見える天井、瓦礫が散らばる床。
その中に埋もれるようにして、ぽつぽつと座り込んだ仲間たち。
もうずっと、誰も口を開いていない。あのジャックや、シンクや、ケイト、ナインまでも。
荒れ果てた教室に、立ちこめる静けさ。それを打ち砕くこともできない、自分たち。
「わたくしたちも、死ぬのでしょうか」
クイーンが弱々しく呟いた言葉で、セブンは気がついた。
静寂の中に潜んだ、声にならない自分たちの声に。
誰もがそう思いながらも、言葉にすれば現実になってしまうような恐れのために認めたくなかった思いを。
「死ぬのって、怖いな」
それを口にした瞬間身体の力が一気に抜け落ち、セブンは椅子に頽れた。認めてしまえば、楽になれると思った。しかし、やはりそれは見知らぬ恐怖を色濃く、大きくしただけ。
違うのか、とセブンは誰かに向かって問いかけた。
これ以上、恐れることがあるというのか。
こんなにも、身体が心が、苦しみを叫び震えているというのに。
クイーンが見つけて、セブンが認めた。その恐怖は、仲間たちの口から次々に語られる。
ある者は痛みを訴え、またある者は苦しみを吐き出した。すすり泣く者にも、あるいは憤り声を荒げる者にも、等しく恐怖はその黒い手を伸ばす。
そしてその手に阻まれて、仲間たちの姿も声も、遠ざけられていく。
恐怖が生み出す冷たい闇に、自分たちが切り裂かれていくように。
そうして、セブンはまた気づかされる。
『死』は、通過点でしかないのだということに。
私たちが、本当に恐れているのは。
その先に在る、孤独なのかも知れない、と。