「……エース……エース、大丈夫?」
夢でも見ていたんだろうか。ぼんやりしていた目がはっきりとアタシを見て、そして少しだけ大きくなった。そのエースが、自分の両手を見下ろしてぽつりと言った。
「そうか……終わったんだな」
そうだよ、って、アタシには言えなかった。
何が、終わったの。同時に、そうも思ってしまったから。
戦争が、戦いが。そういうつもりで、エースは言ったんだ、きっと。
でも、終わりそうなものが、もっと他にあるじゃない。
それを、認めたくなかったんだ。
「わたくしたちも、死ぬのでしょうか」
クイーンが、そう呟いた。
らしいといえば、らしいよ。なんでもきちんとしてなきゃ気が済まないクイーンは、はっきりさせたかったんだ、多分。
アタシたちみんながそう思っていて、だけど誰も口に出して言えなかったこと。
そうやって、認めたくなかった可能性をクイーンが言いだしても、アタシはちっとも嫌な感じがしなかった。
「死ぬのって、怖いな」
セブンが、そう言ったから。
認めたくなくて、でも吐き出さないとどんどん自分がそこに沈み込んでいきそうで。そうなってしまいそうなことが、怖くて。
アタシひとりがそう思ってたわけじゃなかったってことが、わかったから。
「やっぱり、痛いよ」
ジャックも、言う。
ほら、みんなアタシと一緒なんだ。
「うん」
アタシは頷いた。その途端、堪えていた涙があふれ出してくる。
泣くことができたのは、誰かと――みんなと同じ気持ちだってことに安心したから。ひとりじゃないってことが、うれしかったから。
やっぱり、アタシはどこかおかしいのかな。
こんな時なのに、アタシの涙は。
悲しみや苦しみだけの涙じゃないなんて。