彼らは仲が良い。私とも良い。 ヒビキくんは私の幼馴染みだし、シルバーは…まあ、友達。 最近、シルバーと仲良くなった。仲良く、と言っても、時々会うか会わないかぐらいだけれど。 そんな二人は、最近私に話せないことがあるようで。 例えば、珍しく三人で合流したとき。 ヒビキくんもシルバーも、お互い話し掛けようとしない。私に話し掛けてくる。 無理矢理二人で会話するように仕掛けてみても、続かない。 その短い間だけ、ヒビキくんは妙に饒舌だし、シルバーは極端に無口になる。 もっと言ってしまえば、二人ともほっぺが赤い。 まあつまり。お互い好きってコトネ。 最初はすごくびっくりした。だって同性だし。 シルバーは確かに女の子に見えなくも無いけど、男子だし。 私からしたらこの恋はバレバレな訳だけれど、不思議なことに二人は全く気付かない。なんて鈍感。 ただ、ひどく怖い。 今はまだいい。 けれど、もし二人が付き合うなんてことになったら。そしたら私はどうなるの? これが、半年前のこと。 ところが、今やそんなこと言ってられなくなったのだ。 ヒビキくんと私は幼馴染み。 私は、お母さんに言われて、この前ホウエンに旅行に行ったときのお土産をヒビキくんちに届けに行った。 こういうとき、私は裏の勝手口に行く。私の家からだと、その方が近いから。 小さいときからそうだった。 遊びに行くときも、なんでも。 勝手口は縁側のガラス戸だ。 私の手の先、ビニール袋の中身は温泉まんじゅう。 ガラスを通して見えたのは、目を瞑ってキスしてる二人。 床にはコップ。割れてはいないけれど、床に水がこぼれている。 シルバーは、ちょっとだけ嫌そうで、でも顔は真っ赤で。ヒビキくんの顔は、ここからは見えない。 一体なにがあったのか。私にはさっぱり分からなかった。 ただ、キスした後、別にシルバーは怒ってなくて。普通にヒビキくんと会話しているようで。 ああ、付き合っているのか、と。それがなんとなく分かった。 お土産は後で渡せばいいんだし、と。一人そう呟いて、私は逃げ出した。 ああ。そういえば最近どちらとも会ってなかったなあと、ぐらぐらする頭で考えた。 ただ、最後にちらりと見えたヒビキくんの横顔が、余りにも綺麗で。 それだけが頭にこびりつき、ヒビキくんたちを邪険にすることなど、私には到底無理なのだと思い知った。 少女αの物語 (私はもう) (あなたたちの外側) back |