神様、ぼくはどうかしちゃったのでしょうか。

ぼくはついこの間まで、普通のどこにでもいる男の子だった。
変わったのは、あの日から。
ウツギ博士からポケモンを貰おうとしたあの日、あの朝。
彼は…赤い髪の彼は、窓から博士の研究室を覗いていた。
ワカバでは見掛けない顔で、不思議に思って話し掛けたら突き飛ばされた。
じろじろ見てんなよ、と。
うん、ぼくはまだ名前も知らない彼のことをじろじろ見た。
だって可愛かったんだもの。すごく。最初は女の子かなと思った。
一目惚れってやつ?
ただ、その後トレーナーズカードを拾ったときに、ぼくはしっかりと見た。
氏名、シルバー。
性別、男。
ショックだった。驚きで声も出なかったけど、名前は頭にしっかりと刻み込んだ。シルバー。
出会ったばっかりの頃のシルバーはすごく冷たかった。
今?今はね、ちょっと違うよ。

「ね、シルバー」

「…何がだ」

最初はあんなにつんけんしてぼくに邪険に当たってポケモンに八つ当たりしてたシルバーが、あのシルバーが今はぼくの隣におとなしく座ってくれてるんだ。
ここ、ぼくんち。近くで会ったから連れてきちゃった。
断られるかな、と思ったんだけど、意外と普通にぼくんちに来て、なんか、どきどき、した。
そのことを思うだけでぼくの頬の筋肉がゆるむ。

「何ニヤニヤしてるんだ、気持ち悪い」

「ひどいなー、シルバーのこと考えてただけだもん」

「…この変態」

「変態?失礼だなー…ぼく、最近シルバー優しくなったなぁって思っただけだし。シルバーこそ、なに想像してんの?へんたーい」

そう言ったら、シルバーはオクタンみたいに真っ赤になった。あー可愛い。これにはニヤニヤしちゃう。また変態って言われるかな…

「…別に、何も、想像してない」

そう、自信なさげに否定する姿がまた可愛くて。
あ、キスしたい。ふと気付いたらそればっかり考えてる自分がいた。

神様、ぼくはどうかしちゃったんでしょうか。
だって、シルバーは男で、ぼくも男で。
なんか妙な距離感で。
付き合ってるとは言い切れないけど、なんだかおかしな雰囲気で。ただの友達なんかじゃなくって。
こう、心臓がすごく、うるさくて。
これじゃまるで、シルバーのこと、好き、みたいだよ…!

「…ヒビキ?さっきから変な顔してるぞ」

「そんなこと、ないよ」

だって言えないよ。
シルバーのせいで変な顔になってるなんて!

Take It Easy !様への提出品!


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