例えば。

「ヒビキ?」

シルバーがぼくの名前を読んで、ぼくの心臓が早鐘を打つ、そんな時に世界が終わるとしたら。

「ヒビキ…?」

シルバーが目を細め首を傾げて、訝しげにぼくを見た。
さっきシルバーがぼくを呼んだときに、シルバーは一瞬下唇を噛んだ。
これはシルバーの癖。『キスしてほしい』と暗に訴えるシルバーの癖。
シルバーがそのことに気付いているかどうかは知らないけれど、きっとぼくがキスしなかったことに少しの猜疑心を抱いているだろう。
いつもはぼくがシルバーにキスを迫りすぎて、シルバーに避けられる、それぐらいぼくはシルバーが好きだから。
なんでキスしないんだ、そう思っているだろう。
でもごめんねシルバー。
ぼくそれどころじゃないんだ。
ああでも、こうやって無視されてちょっと不機嫌なシルバーも可愛いな、と訳の分からないことをぼくは考えた。
しょうがないから、キスしてあげることにする。

「ひび、…んっ」

キスしてるときにこっそり目を開けてシルバーを盗み見た。
目を閉じているその顔。
普段は嫌がってるのに、今日は嫌そうでなくて、むしろ嬉しそうで。やっぱりシルバーだってこういうこと好きなのかな、とか考えた。
そしたら、普段だって嬉しくすればいいのに。素直じゃないなあ。
そしてふと気付いた。

「ねえシルバー」

一緒に消えよう。


神様、今この瞬間に世界を終わらせてください。



(今ならきっと)
(幸せなままだから)


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