※死ねた すっと空に手を伸ばした。 そこには冷たく空気が広がっているだけで、何も無かった。異様に冷たい空気は僕の喉を通るときに、ナイフのように鋭くなって、その切っ先は僕の肺へとまっすぐ落ちた。息をするだけで苦しかった。 風がびゅうと吹いた。僕の髪は短いから、風に吹き付けられた瞬間に頬に強く当たってバタバタと音を立てた。 長い髪は持っていない。邪魔なだけだ。男が髪をそんなに伸ばしてどうするのだ、と思ったところで、緑色が頭を過ぎった。そうだ、あの親子はどちらも髪が長かった。 どうしてNはいないんだろう。 (良いお話じゃあ無いんだが…) なあに、ハンサムさん。 (トウヤ、あんた大丈夫?) どうかしたの、トウコ。僕はどこも痛くないし、悲しくもないよ。どうして心配するの。 そう言ったら、皆は悲しそうな顔をして黙った。僕はなにか変なことを言ったのだろうか。 そんなことより、ハンサムさん、まだNは見つからないの? 僕も自分で探してはみたけれど、見つからないんだ。 他の地方のこと、僕は知らないから、だからハンサムさんに探して貰わないと。 そうだ、まだイッシュで探してないところがあるんだ。 そこに、探しに行けばNを見つけられるような気がするんだ。 だから、 僕の両手が空に散って、 Nの面影がそこに見えた、気がした。 ヘヴン (この空に飛び込んだら) (きっとNに会えるよね) back |