何故だ。何故みんな僕の部屋にいるんだ。

「トウヤ、水を貰っていいか?喉が渇いた」

「あっ、わたしもー!チェレンー、わたしの分も汲んできて!」

「ベル…まったく君は…」

「じゃあボクもー」

「Nも!?」

なにやら僕抜きで話が進んでいるようだ。ここ、僕の部屋だぞ。
チェレン、なんでそんな偉そうなんだ。でも水は僕の分も汲んできてくれるだろう、多分。
ベル、僕のベッドで寝るな。枕ふかふか?知らねぇよ。
トウコ、僕の机を漁るな。でも残念だったな、そこにエロ本は無いぜ!
そんでN!

「お前はさっきからクレヨンぶちまけて何やってんだ」

「何言ってるんだい?これはクレヨンじゃなくてクレパスだよトウヤ」

「……」

さいですか。
いやそんなこと聞いてねぇ。

「だから何してんだよ」

「そうだトウヤ、紙がほしいな。みんなで絵を描こうよ」

「……」

Nはどうやら話を聞く気が無いらしい。
いやまあいいけどね。みんなで絵を描く。楽しそうだねなんでみんな僕の部屋にいるんだ。
そう思ったらドアが開き、水を汲んだチェレンが戻ってきた。

「水汲んできたよ」

「あっほら、チェレンも来たし、早く早く」

「…はぁ」

もうこれは、どうしようも無いんだろうな。



     ◇



「じゃーん!見て見てー!!」

オレンジ色のクレヨンを主体に描かれたベルの絵。いやしかし…

「…ベル、これはなに?」

ありがとうチェレン。お前は勇者だ。

「夕焼け!」

「……」

オレンジのクレヨンだけ異様に短い理由が分かった。
チェレンはなにも描いていない。白紙だ。恥ずかしいんだろうな、きっと。こいつは昔っから絵とか駄目だし。

「トウヤ見なさい!あたしの最高傑作!」

「…すげーなトウコ」

いやすごい。確かにすごいんだけどこれは…

「戦車の絵を描く女の子を初めて見たよトウコ」

「なによチェレン。なんか文句あんの?」

「いや、無いよ!」

トウコは怖い。トウコには逆らわない方がいい。
そういえば、Nがお絵描きの言い出しっぺだったけど、まだ絵を描いてるのか?

「N、絵は描けたか?」

「うん、描けたよ!」

輝かしい笑顔を浮かべてNはそう答えた。
見せてもらったその絵は…



(トウヤは?)
(わっ、バカ…!)
(上手だね、トウヤ)


―――――
トウヤ:普通に上手い
トウコ:異様に上手い
チェレン:センス皆無
ベル:なんかほんわか
N:幾何学的で前衛的

ちなみにトウヤはみんなの似顔絵を描きました


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