03

「ここ。これであってるか?」

「ん。せーかい!!すごい!!解けたじゃん!!」

「名前のおかげだよ!!」

「やっぱりそう思う?」

「腹立つな。撤回すっかな」

「うふふジョーダンだよ冗談!!ゼットンが頑張ってるからだよ!この調子でがんばろ!!」

「おう!」

ゼットンへ勉強を教えるようになってから早数か月。初めは基礎が分からないと頭を抱えていたゼットンだったが、段々と解けるようになり、夏に差し掛かった今では中学生レベルであればほとんど解けるようになっていた。
ゼットンの勉強を身近で見てきてわかったことだけれど、元々勉強を真面目にしてこなかっただけで理解ができないわけではないようである。ただ、わからないところを飛ばしてついていこうと焦っていたから余計にわからなくなってしまっていただけ。ゼットンのペースで一歩ずつ進んでいけば確実に伸びると私は確信していた。

「あら名前ちゃん来てたのねぇ。って三郎!!あんたお客さん来てるのにお菓子もなにも出してないの?!いつも勉強教えてもらってるのに!!ほんとごめんね気の利かない息子で……持ってくるから待てて」

「あ、おかまいなく!!」

はじめはカフェやファミレスで勉強していたのだが、ゼットンのお財布事情もあり、最近では花澤家のリビングで勉強するようになっていた。
“1人暮らしだし教科書もあるし私の家でやる?”とも提案したのだけれど、ゼットンからものすごく怒られたのも良い思い出である。

「三郎の調子はどう?勉強進んでる?」

お菓子とついでに飲み物を持ってきてくれたゼットンのお母さんから声を掛けられた。

「はい。この問題も解けるようになったんですよ。初めの頃と比べてかなり力付いてると思います!」

「それもこれも名前ちゃんのおかげよ。なにかお礼しないとね」

「そんな!いつもお夕飯ご馳走になってますし、おばさんの手料理めちゃくちゃ美味しいし私の方こそいつもありがとうございます!」

ゼットンの家で勉強をするようになってからほぼ毎回夕飯をご馳走になっている。正直、1人暮らし初心者の私は若干のホームシックに陥っていたのでおばさんの提案はありがたかったしめちゃくちゃご飯は美味しいしおばさんもおじさんも優しいし、勝手に第二の両親ができたみたいな気持ちになっていたりするのだった。

「あ〜もう!私も娘ができたみたいで嬉しいからいいのよ!!今日の夕飯も張り切っちゃう!!今日は名前ちゃんの好きな唐揚げよ!!!」

「わーーーーい!!!唐揚げ!!」




「二人で盛り上がってるところ悪ぃんだけどよ、俺の事忘れてねぇか?問題解いたから見てくれ」

ゼットンが申し訳なさそうに私とおばさんの会話に入ってきた。

「あ。ごめん今から見るね」

ごめんすっかり忘れてたよ。


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