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ゼットンと出会って2年目の春がやってきた。
今日は結果報告の日だ。待ち合わせは私達が出会った思い出の公園。
いつも以上に身嗜みに気を使って公園へ向かった。



公園へ着き、椅子へ座って上を見上げると、後ろに立っている木に桜の蕾がちらほらと窺えた。
あー、この木って桜の木だったんだ……。知らなかった。

ゼットンと出会った時のことや、ここ二年間の事を思い出し物思いに耽っていると、少し遅れてゼットンがやって来た。

「よぉ!待たせたな」

「んーん!全然!」

私の横にドカリと音を立てて座ったゼットンの横顔には、初めて見た時の項垂れていた面影は一切なかった。


「ゼットンから言って。」

「……受かった!!!」

ゼットンは大きく深呼吸した後に、いつもの太陽みたいに輝かしい笑顔で言った。
それを見て私も嬉しくなって、思わずゼットンの肩を掴んでしまった。

「やったね!!!おめでとう!!!ほんと良かった!!!!」

ゼットンの今までの努力とか色々思ったら私が泣きそうになってきた。
え、ほんとやばいんだけど。

「ありがとよ!!ところで名前はどうなんだよ??」

肩を掴まれた事で照れたゼットンは、そっぽを向きながら聞いてきた。

「私も入りたかったとこに受かったよ!!」

ちょっと泣きそうになっていたので、声が掠れていたけれど、しっかり伝えることができた。
ゼットンと会わない間に先生に相談したりインターンで知り合った人達と情報交換をして、後悔しない形で就職を終えることができたのだ。

「よかったじゃねぇか!!」

「うん!!ありがとう!!ゼットンのお陰だよ!!」

ゼットンが私の支えになっていた。辛くなっても、ゼットンとの約束を思い出して頑張れた。だから本当にゼットンには感謝しているのだ。
素直にお礼の言葉が出てきた。

「それは俺のセリフだけどな!!お前にはほんと感謝してる」

「じゃあお互い様だねー!」

「お互い様の使い方間違ってねぇか?」

「ゼットンに指摘されるとは……」

「どういう意味だよ!!!」

暫くお互いにハイテンションで笑い合った。
多分側から見たら今の私らノリが完璧JKだよ。




「それでよ……、受験終わった後に色々考えたんだけどよ……」

一通りはしゃぎ終わった後に、ゼットンは急に声のトーンを落として、改めて真剣な表情をして私を見つめてきた。
流石にこれは茶化していい雰囲気でもなかったので、言葉の続きを黙って待つ事にした。

「名前とここで初めて会って、はじめは俺の夢みたいな話をちゃんと聞いてくれて、正直変なやつだなって思ったんだけどよ。」

なんだなんだ突然悪口か??

「俺の事なのに俺以上に真剣に俺のことを考えてくれて、自分の事犠牲にして協力してくれてる姿見てよ、なんつーか……これからもそばにいて欲しいっつーか。あーーーーー!!!!こう言うの初めてだからなんて言ったらいいかわかんねぇーー!!!」

段々恥ずかしくなってきたのか、ゼットンは叫びながらその場に蹲み込んだ。

「……名前、お前のことが好きだ。俺と付き合ってください。」

ゼットンは蹲み込んだまま私を見上げる形で、でもさっきと変わらず真剣な表情で言った。
その顔にドキドキして、ゼットンに対しての今までの気持ちはすべて恋心だったんだろうな、と思った瞬間その答えがストンと心に落ちついた。

「えっと……あの、ね。すごい嬉しい。嬉しいの。だけど、ゼットン遠距離大丈夫???……私の就職したところね、チェーン店がいっぱいあるところでね、新人研修で4年くらい東北の店舗で働かないといけなくて……」

ゼットンの気持ちはすごく嬉しかったし、すぐにでも”よろしくお願いします!”と言ってしまいたかった。でも、私だって好きな人の負担になりたいわけじゃない。

「……遠距離は全然平気なんだけどよ、俺も東北だぞ?」

「えっ?」

「え?」

“言ってなかったか?”と、続けて言われたけども、聞いてない!!聞いてないよ!!!

「……えっと、あの、よろしくお願いします?」

「……こちらこそ??」

お互いになんと返したらいいのか分からなくて疑問系になってしまったけれど、晴れてゼットンと付き合う事になった。
雰囲気もへったくれもないけれど、出会いからしてこんな感じだ。私ららしくていいじゃないか。



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