09
暫くして気持ちも落ち着いてきたところで、今度は自分がしでかした大胆な行動に恥ずかしくなってきてしまい、中々顔を上げることが出来ずにいた。
え、ちょっと待ってどうしよう……。

「なぁ名前…そのまま聞いてくれればいいんだけどよ、お前やっぱ無理してんだろ??引っ越してきて学校にも行って、新しい環境で自分だって忙しいのに俺なんかのためにいっぱい協力してくれてよ。俺が無理させちまったんだよな……ほんと悪かった」

「違う!!!私がやりたくてやった事だもん!!!ゼットンのせいじゃない!!それに……、それに。ゼットンと勉強するの私も楽しかったから!!だから…そんなこと言わないで……」

思わず顔を上げてゼットンの言葉を否定した。最後の方は尻すぼみになってしまったけれど、私の意見は変わらない。
そんな、私がゼットンとの時間を苦痛だと思ってたみたいに言わないで。

「悪かった……。」

ゼットンは辛そうな顔で私を見つめている。

こんな顔をさせているのは紛れもなく私だ。
私がもっとしっかりしてればこんな事にはならなかったのに。ゼットンだってゴールに向かって頑張ってるのに、不安なのは同じはずなのに。
なにしているんだろう、と自分の不甲斐なさにまた泣きそうになる。

泣いてばかりじゃダメだ。私も変わらないと。

「……よし!!決めた!!次のゼットンの発表までゼットンと会わない。それまで絶対に連絡しないで。でも信じて。私も頑張るから、ゼットンも頑張って。……それでゼットンの結果が出たら連絡して?お互い結果報告しよ。その時にまた会おう?」

私は真剣な表情でゼットンの目をしっかりと見て伝えた。

ゼットンもはじめは驚いていたけれど、私の話を聞いて段々真剣な表情になり、最後はいつもの笑顔になっていた。

「おう!!!わかった。それまでお互いがんばろーな!!!!」


「ありがとう!!」




公園からの帰り道。
私は時間も遅いからとゼットンに送ってもらっている。

「前とは逆だね」

「あ?なにがだ?」

急に思い出したらおかしくなってしまい、笑いながら言ったらゼットンに不思議そうな顔をされた。

「ん?公園で座ってる時の事!!正直男性に声掛けられたから焦ったんだよね。」

ゼットンや友人の名前から口酸っぱく言われているので、公園で声をかけられた時知らない人から声かけられたと思って正直かなり焦っていたのだ。

「あーそのことか。俺からの説教いるか?」

ゼットンに真顔で返されてまたおかしくなってしまった。

「遠慮しときまーす!!」

“あの時のゼットンヒーローみたいだったんだよね”と、続けて言おうかとも思ったけれど、茶化されそうだったし私も恥ずかしいからこれは心の中に留めておこうと思う。


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