▼17


「だからね、いっちゃん。最後がyの時はiに変えてesを付けるんだよ?」
「すだでぃーぇど…でなくて、すたでぃえすー…ず?」
「うあー……発音はともかく形で覚えようね!!だからstudyは最後がyでしょ?だから、」
「英語爆発しろ☆」
「世界共通語だからあああ!!!」
「お前らうるせえええええ!!!」
「海斗が一番うるさいよな。」
「椎名ちゃん、ちょっと遠くに移動しないデスカ?」
「えっ、で…でも…。」
「お?移動すんの?じゃあ俺も〜…。」
「っ!!………はあ…、もう帰りたい…。」

海斗の家で朝食を食べた後、イリアと楼亜を迎えに行っていた椎名と合流した海斗達はそのまま図書館へ来ていた。
図書館、と言っても楼亜とイリアに初めて会った奥の旧館の方である。旧館の方は立ち入る人も少なく奥まった場所にあるので、いくら騒ごうが本館にいる人達には聞こえないのである。
最初のうちは真面目に勉強…するはずがなく、このメンバーで集まったからには騒ぎたい人間2人とふざけた人間1人、天然な人間2人、真面目な人間1人で構成されているので明らかな突っ込み不足である。なので唯一の突っ込み役である海斗はそんなに時間が経っていないにもかかわらず既にぐったりしていた。
「ってか楼亜!!お前一回習ってんだからお前も教える側だろうが!!」
「えー。俺が教えるまでもなくね?それに俺の得意科目はほけんt」
「下ネタ禁止ーっ!!」
「ざ〜ぁんねん。」
全く残念そうに見えない笑みで肩をすくめる楼亜に、海斗は頭を抱えた。

「砕牙せんぱーい。もう英語飽きましたー。」
「まだ10分くらいしか経ってないよいっちゃん!?」
「おおー。10分もやったあたしって偉いですね〜。」
「んじゃ数学する?オレ得意だよ〜。」
「いえ。数学は数字見てると頭痛くなるんでいいです。」
「アタシも数学は…。」
ノーサンキューです。と片手を砕牙に突き出す伊月にならって、イリアも控えめに手を上げた。
「ええー。なんでなんでー?数学楽しいよ数学。だってどうあがいても答えがひとつなんだよ?タンジュンメーカイじゃない?」
「その答えにたどり着けないホラー現象が起きるんですよね。何故か毎回。」
「…同じくデス。公式おぼえても使いどころがわからないデス。それに公式の使い方もわかんないデス。」
「あー、わかるわかる〜。最終的に文章問題から数式を導き出すことに挫折しちゃって、文章問題見たらとりあえず飛ばしちゃうんですよね〜。」
「それで結局埋めずじまいで時間になってしまうデス…。」
数学嫌い同盟でも組みそうな勢いで、数学嫌いにおける数学嫌いな理由を言い合う二人に周りの人間が苦笑やため息を零した。
「…お前等典型的な数学嫌いだな。」
ため息交じりに海斗が言えば、伊月が頬をふくらました。
「三角比なんてわかんなくても生きていけるんですー!!」
「大学進学する予定はどうしたお前。」
「………はっ!!」
今思い出しましたとでも言いたげな伊月の態度に、ダメだこいつ…と海斗が呆れた。
「伊月ちゃんって大学行くんだ?」
「予定ですけどね!!大学行ってビックになってやるんです!!」
「わぁお…見えないくらいおっきな夢だねー。」
若干頬を引き攣らせながら楼亜が何重にもオブラートを巻いて言えば、伊月は得意げにフフンと鼻息を荒くした。
「伊月ちゃん…っ!!かっこいいデス!!」
「イリアちゃんっ!?」
キラキラとした目で伊月を見るイリアに、楼亜が焦る。…が、イリアは見向きもせずに伊月に尊敬のまなざしを向けていた。

「………カイト、オレ…なんだか帰りたくなってきた。」
「……おめでとう。それが正常な反応だ。そして俺の方がもっと前から帰りてぇよ。」

現実から目を背けたくても背けてしまったらより収拾がつかなくなるので現実逃避できない海斗と、普段現実逃避をしていないからいまいち逃避できない砕牙。そんな二人をよそに騒ぎまくる伊月、イリア。彼女たちを止めようと奮闘する楼亜。ただ一人、椎名はそんな面々を元気だなぁ〜と思いながら一人黙々と宿題を片付けることに徹していたのであった。

====================

主要メンバー勢揃いすると本当に収拾つかなくなって困る…。
130129






[*前] | [次#]
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -