▼11(1/2) 結局なんだかんだで全員がそれぞれメアドを交換し合った。 そこへ一台の大型車が来た。 「お、やっと来たか。」 楼亜がそう言うと、その車はマンションのすぐ前…。つまりは彼らの前で停車した。 「ルカ、遅かったな。」 助手席側の窓をコンコンと叩きながら楼亜が言えば、窓が下がり青い長髪の男が運転席に乗っていた。 「……掃除、してた。」 ちらりと後部座席を見てからルカ、と呼ばれた男は答えた。 「ルカ、久しぶりデス。」 イリアが近寄ってあいさつすれば、ルカは無言で片手を上げて応えた。 「あ、紹介しとくわ。こいつはルカ。俺専属の運転手。」 「嘘はよくないデスヨ、楼亜。」 鈴高組を振り返り、にっこりと説明した楼亜を、イリアが横目で睨んだ。 「えー。あながち間違ってないと思うんだけど。」 そういう楼亜に溜息を一つこぼして、イリアは説明をした。 「ルカはちょっと前にネットで会社立ち上げた社長さんで、楼亜の先輩デス。」 「へぇ〜。シャチョーさんかぁ…。」 鈴高組が多種多様に驚いていると、楼亜がああそうだと声を上げた。 「ちなみに白先輩とも仲良しだったりするんだよね。」 「「「白さんと!?」」」 海斗、砕牙、伊月が声を上げて驚き、椎名はあの店員さんでしたっけ?とのほほんと記憶をたどっていた。 「…世界って意外と狭いんだね〜。」 「ってか白さん、何気に顔広いんだな…。」 「え。白さんの顔はフツーサイズだよ?」 「そういう意味じゃないですよ砕牙先輩。」 「知り合いが多いって意味だ。」 「うん?そうなんだ?」 「ダメだこいつわかってねぇ。」 「いやいや、そこはかとなくわかった気がしないでもないよ!!」 「……随分と微量な理解度だな。」 「…微量というか微妙です。」 「おーい。言葉遊びはその辺にして、そろそろ行かね?」 放っておくといつまでも話しかねない三人に楼亜が声をかけた。 「イリアちゃんも椎名ちゃんももう乗ってるけど?」 暗に早くしろと言えば、三人は慌てて車に乗り込んだ。 後ろに6人乗れるタイプの車で、6人が向かい合わせで座れるようになっていた。 「……これで男女分けて座ったらなんか合コンみたいですね。」 という椎名の天然発言により、運転席に背を向ける席に楼亜、海斗、砕牙の順に座り、砕牙の向かいに椎名、伊月、イリアと座った。 「イエーイ!!なんちゃって合コン!!」 砕牙がハイテンションに声を上げれば伊月が砕牙先輩うぜえと嘲笑い、その言葉に砕牙が落ち込んだ。 「……伊月ちゃんって、結構毒舌キャラだったりするんだ。」 「いや、あれにその気はない。素で言葉の選択が悪いだけのじゃじゃ馬だ。」 「適当言わないでくださいよバ海斗。」 向かいに座っている海斗の脛に、蹴りを一撃お見舞いする伊月。 「わー…。」 今まであまり見なかった(気づいてなかった)伊月の一面を見て若干引き気味の楼亜と 「伊月ちゃん、今の蹴りかっこよかったデスっ!!」 伊月の暴力的な場面を見て、目を輝かせながら伊月を褒めるイリア。 「やっぱり、みなさん仲良しさんですね。」 癒しオーラを放ちながらニコニコと天然爆弾を投下する椎名に、なぜそうなる…と海斗は盛大なため息を吐いた。 背後に飛び交う様々な言葉と雰囲気に、ルカは人知れず口元を緩めて運転に集中した。 車で走る事約1時間。山の中を走り豪勢な門を抜け、車を置いてくるとルカに降ろされて少し歩けば、此処が俺ん家の別荘。と白を基準に作られた西洋の豪邸のような建物が目の前にあった。 「でっ………か!!」 「キレー!!」 楼亜の別荘を見た途端、伊月と砕牙が驚きの声を漏らした。 「今住んでる所から一番近くてさ、此処はよく使ってんだよね。」 わりと山ん中だから星がよく見えるぞ。という一言に、全員は空を見上げた。 「す、げ…。」 感嘆の声を漏らした海斗に次ぐように、椎名、伊月もため息交じりの声を上げた。 頭上に広がる満点の星空は、色とりどりの宝石を散りばめたかのように光り輝き、とても美しかった。 「……ここに来るとさ、自分の無力さを痛感するよ。」 ぽつりと零した楼亜の言葉に、皆の視線が星空から楼亜へ移る。 「……俺は親の金でこうやって豪遊できるけどさ、所詮はただの若造に過ぎない…。何もできない、本当にちっぽけな存在なんだ…。」 視線を斜め下に反らして、悲しげな微笑みを浮かべる楼亜。そんな楼亜の頭にチョップが落ちた。 「ってー!!何すんのイリアちゃん!!」 チョップを落とした張本人、イリアを軽く睨むと睨まれた本人はやれやれと言いたげにため息を吐いた。 「…そんな見え透いた嘘つくなデス。」 「あー…ばれてた?」 さっきまでの悲しげな表情とは打って変わって、悪戯がばれて親に怒られている子供のように、イリアの顔色を窺いながら苦笑いを浮かべた。 「えー…と。嘘、なんですか?」 伊月が恐る恐るという様子で尋ねると、楼亜はにっこりと笑って言った。 「営・業・トークv」 ハートマークを飛ばしながら悪気もなく言ってのけた楼亜の脛を、イリアは思い切りけった。 「―っ!?――っ!!?」 声にならない声を上げて、蹴られた脛を抱えうずくまりながら痛みに耐える楼亜。その姿を見下ろしながらイリアは鼻で笑い、伊月はそんなイリアに親指を立てた握り拳を満面の笑みで向けた。 「……脛って、結構痛いよな。」 同じ痛みを知る海斗は楼亜に同情の眼差しを向けた。 「ベントーの嘆き所だよね!!」 「弁慶の泣き所。屈強な弁慶でも痛がるという人間の急所だ。」 「あの、大丈夫……ですか?」 うずくまる楼亜の傍にしゃがんで顔を覗きこむ椎名。さすが保健委員。 「っつー…。ああ、天使が見える。」 「痛みのあまり幻覚が見えているみたいです!!」 「気にするな如月。頭が沸いてるだけだ。」 「あとで覚えてろよ海斗ぉ。」 椎名の優しさに感動しながら口説けば持ち前の天然でスルーされ、更にあらぬことまで言われてしまい、楼亜は心身ともに大ダメージである。 「……花火、しないの?」 敷地の中には入ったが、建物の中には一向に入ろうとしない学生たちに、いつの間にか現れたルカがボソッと呟いた。近くにいた砕牙がその言葉を拾い、未だに談笑(?)を続けるみんなに声をかけた。 「はいはーい!!オレ、花火したいです!!」 元気よく挙手すれば、伊月があたしもー!!と同調し、椎名とイリアも控えめに手を上げた。 「ああ。当初の目的からそれてたな。」 おかえりルカ、と短く呼ばれ楼亜に近寄れば、伊月が別荘を見たときと同じ感想を漏らした。 「ん?…あー、座ってたから気付かなかったのか。」 楼亜に近寄ったことで蚊帳の外だったルカに視線が集まり、その高い身長に周りが驚愕した。 「…楼亜よりでかいんだな。」 180は越えてるよな…と、ルカを見上げながら唖然と海斗が零せば、ルカは半ばうんざり気味にゆるゆると首を振った。 「…190センチもいらない。」 「ひゃくきゅっ!?」 「実際は192だっけ?」 「……昨日また1センチ伸びてた。」 「……嫌味デス。」 「……いる?」 「いらないデス!!」 恨めしげに睨み上げるイリアに、ルカが身長の受け渡しを提案すれば慰みは不要!!とでも言いたげに即答で断られた。 150ちょっとしかないであろうイリアが横に並ぶと、かなり大きく見える。…と言うより、180前後の楼亜がそこに加わると……イリアがとても小さく見える。それはもう、小学生並みに。 「恐るべし金持ち!!」 「いや、身長と財力は関係なくね?」 伊月のぶっ飛んだ発言に突っ込みを入れつつ、海斗は再び星空を見上げて身長ほしいと、願ったとかどうとか…。 → |