▼15


集合した4人はショッピングモールへと向かった。

流石というべきか、入ってすぐに浴衣や水着の特設ブースがあり大人から子供まで、夏を満喫するものがここぞとばかりに陳列されていた。

「うひゃー…。この水着、きわどくねぇっすか?」
「…男性ってやっぱりこういうのがお好きなんですか?」
「これ?セクシーだね〜。オレはこういうの嫌いじゃないけど、目のやり場に困っちゃうな。ねえカイト?」
「……俺に振るなよ。」
ほぼ紐状の水着を着たマネキンを前に、若干居心地の悪そうな海斗。
「お!!カイトカイト、こうゆーのはどうよ。」
じゃじゃーんとハンガーにかかった水着を海斗の前に差し出す。
持っていたのは白いビキニ。わりと布面積が多いが、谷間が強調されるように大きくV字に開いていて、そこに沿う様にフリルがついているものだった。センター部分には飾りの紐がついており、蝶々結びにされていた。下は腰周りにフリルが二段階でついていて、ビキニラインを隠していた。
「おっ、俺に見せてどうする!!」
少し上ずった声で反論すれば、砕牙と伊月がにやりと笑った。
「おやおやぁ〜?見ましたか伊月サン。」
「見ましたよ砕牙サン。どうやらこういうのが好きみたいですね〜。」
「そのようですね〜。」
「っぐ、お前等っ…!!」
「…私も、こういうの好きですよ?」
椎名の発言に3人が椎名を見た。
「あ、デザイン的に。という話ですよ?自分で着るのは…その、別ですから、ね?」
そう恥らいながら椎名が言えば、砕牙が水着と椎名を交互に見て、
「ん〜?しーちゃんこういうの着ないの?似合うと思うけど…。」
「ふ、藤井さん!!……だって、び、びきにとか、恥ずかしいじゃないですかっ!!」
胸の前で拳を作りながら、何を言わせるんだとばかりにそう言う椎名。
「そう?上にパーカーとか着てたらそんなに気にならないと思うよ?あ。」
首をかしげながらそう言ったかと思うと、砕牙は椎名の後ろへと手を伸ばした。

「んじゃーさ。こーいうのはどーよ?」
手に取ったのは一見ワンピースのようにも見える青色の水着。襟ぐりにフリルがあしらわれていて可愛らしくまとめてあった。
「わ、可愛いですっ。」
砕牙から水着を受け取ってひっくり返したりめくったりしながら観察する椎名。そんな彼女に海斗が声をかける。
「…買うのか?」
「うーん…どうしましょうか?今の所泳ぎに行く予定はないですし……。」
「予定がないなら作ればいいのさっ!!」
「そーですよ!!プールでも海でも、せっかくの夏休みなんっすから満喫しないと!!」
歯を見せながら笑う砕牙と伊月に椎名はきょとんと瞬きをし、海斗は呆れたようにため息を吐いた。
「お前らなぁ…。そんな遊んでばっかだと宿題できねーぞ?それに砕牙は受験やら何やらあんだろうが。俺等もう高三だし。」
やれやれと現実的なことを指摘されて大ダメージな伊月に対し、砕牙はヘラリと笑った。
「オレは卒業したら実家に帰るから受験しないよー?」

「…は?」

砕牙の発言に、三人が目を大きくする。

「元々、高校生活だけってハナシだったし、それに高校入ってから一回も親に連絡も何もしてないからね〜。いー加減顔ぐらい見せないと。」
今までそんな素振りを見せていなかったにもかかわらず、突如として突き付けられた『フランスに帰国する』という進路に一同呆然とする。
「え、じゃ…じゃあ卒業式終ったらもう砕牙先輩と会えないんですか!?」
「ん〜…、わかんにゃい。でもまあ1年くらいはあっちにいると思う。」
「そう、ですか…。寂しくなりますね……。」
しゅんとする如月姉妹。そんな二人に苦笑を零して海斗を見る。海斗は眉間にしわを寄せ、何かを言おうと口元を動かすが、言葉が見つからないのか口を開くことはなかった。
「カイトは?進路、どうすんの?」
砕牙の問いかけに伏せ目がちに泳がせていた視線を上げた。
「俺は………まあ、地元にはいないな。」
「え、海斗もどっか行っちゃうんですかっ!?」
砕牙の時よりも悲痛そうに顔を歪める伊月。
「受けたいところが遠いからな。都会で一人暮らしす予定。」
「聞いてないっすよ……。」
「……そう考えると、みんなバラバラになってしまいますね…。」
「…ねーちゃんも地元、離れるって言ってましたもんね。」
「そうなのっ?」
「ええ。医学部のある大学に行きたいので。」
「…そう言えば医者、目指してるもんな。」
「はいっ。…五十嵐くんはどちらの大学を受験する予定なんですか?」
「…どこ、ってのはまだ。オープンキャンパス行って考えようかと。…とりあえずは法学部希望。」
「カイト文系だもんね。えーっと、ケンジとか向いてそう!!」
「検事か…。弁護士とかよりはそっちかもな。」
「まあ!!弁護士志望なんですね。」
「いや、そういうわけじゃねーけど…。」
「お医者さんと弁護士か〜…なんかカッコイイねっ。」
「お前は白衣着て科学者とかやってそうだけどな。」
「あ、それはイメージできます。藤井さん、白衣が似合いそうですもの。」
「うはっ。オレってばMad scientist?」
「相変わらず無駄に発音いいなお前は。そしてなぜ狂った科学者前提なんだ。」
「うへへ〜…。それ「決めましたっ!!」」
「うわぁ、びっくりしたー…。どしたのいっちゃん?」
今までだんまりを決め込んでいた伊月の急な大声に思わずビックリする。
「あたしも都会行ってやります!!」
鼻息を荒くして意気込む伊月に、三人は目配せしながら微妙な表情を浮かべた。
「…おい、伊月。お前の学力で大学いけると思ってるのか?」
海斗なりにオブラートに包んだ言い方で現実を見ろといえば、案の定脛を蹴られた。
「伊月ちゃん。みんなが地元から離れるからって、伊月ちゃんまで無理に行かなくていいんだよ?」
「いーえ。もう決めたんです!!」
足を押さえてしゃがみこんでる海斗を無視して椎名がなだめるように言えば、もはや意地になってるとしか思えない返答が。
「…いっちゃんは、なんの学部受けるの?」
砕牙が優しくそう聞けば、人差し指をピンと立てて砕牙に突き付けた。
「ズバリ、経済学部です!!」
何ともすがすがしいまでのドヤ顔で言われ、返す言葉も反応も思いつかない砕牙。
「…っ、お前は数学パッパラパーじゃねーか!!」
「なっ!!…いやそうですけども、経済は数字だけじゃ推し量れないこう………なんかもわっとしたものが!!」
指をわきわきと動かしながら目の前で円を描いて見せる伊月に海斗が立ち上がる。
「もわっとしてんのはお前の将来だアホ伊月!!」
「何上手いこと言ってんですかバ海斗のくせに!!」
「もわっとしてんのかよ!!」
「いやいやいや…。それとなくおぼろげに遠く彼方に何かは見えてるんですよ!?」
「ぜんぜんみえてねぇじゃねーか!!」
「だから何かは見えてるんですって!!たぶん!!」
「まーまーまーまっ、二人とも落ちつこ?途中からバンザイしてるって気がつこう?」
「バンザイしてないですよ!!」
「漫才はしてねーよ!!」
「あー…うん。もうわかったから、ね?とりあえず落ち着こう。しーちゃんが笑い堪えすぎて酸欠気味だから落ち着こう。」
その言葉に椎名を探せば、顔を赤くさせて体を震わせる…涙目の椎名がいた。
「はいはーい。もう笑っちゃいなよしーちゃん。」
「…っ、だ…だって…ふ、笑っ、ては……ぷくっ、し、しつれっ!!」
「………もういっそのこと笑い飛ばされた方がいいと思うよ。そこまでなってたらさ。ねえ?」
椎名の側で肩を叩きながら海斗と伊月を見れば、少し頬を赤らめて気まずげにお互いに視線を反らしていた。
「あー………どうする?」
「いやあー……どうしましょう?」
「とりあえずいっちゃんは何で経済学部?」
呼吸を整えている椎名の背中を擦りながら砕牙が聞けば、伊月はフフンと口角を上げた。
「医者、弁護士、科学者とくれば社長にでもなってやろ「無理だな。」ちょっ!!せめて最後まで言わせてくれたっていいじゃないですか!!」
伊月の発言を皆まで聞かずにしれっと言ってのけた海斗に再び食いつく。
「社長なんて簡単になれるもんじゃねーし。…ああ。社長になるならルカさんに聞けばいいじゃねーか。社長のなり方。」
あの人も社長だっただろ。と海斗が言えば、ハッとした伊月。
「社長キャラはすでに居やがりました!!」
「社長キャラってなんだ社長キャラって。」
「だってー。どうせなら周りでやってない職業がいいじゃないですかー。」
「周りでやってない職業?」
「医者と弁護士と科学者でしょー?」
「いや、それは未定だから。ってか俺は弁護士じゃねーし。」
「作家とマスターとシェフと社長とー。」
海斗の無視か、という発言すら無視して周りの職業を指折り数えていく。
「カフェ店員と、ガキンチョと女たらしとお嬢さま?」
「最後の方職業じゃなくね?」
「もー、いいじゃないですかー。」
唇をとがらせて不機嫌をアピールする伊月に笑いが収まった椎名が声を上げた。
「でも、そう考えると私たちの周りっていろんな職業の人たちがいますね。」
「そうだね〜。今まで気にしてこなかっただけで、よく考えるとオレ達って顔広いよね。」
「…だな。知り合いの知り合いとかが顔見知りってのも、わりとよくあるし。」
「でしょ?ずっと狭い世界でいたはずなのに、いつも間にか知り合いが友達になって、気付いたら世界がおっきくなってるなって思ったんです。」
「…で、社長になる、か?」
「話ぶっ飛び過ぎっすけどそんな感じです。だってせっかく世界が広がってるって気づいたんですから、どうせならとことん広げまくってやろうかと思ったわけなのです!!」
少しの照れくささを隠すように胸を張ってそう言い切れば、三人からも照れ笑いが返ってきた。
「んじゃーま、世界を広げるために海にもいきますか!!」
「サンセーです!!」
「はいっ。」
「…ったく。」
「あ、ユカタも買わなきゃね!!」
「ああ、そうだったな。」
「カイトもユカタ着ようね。」
「は?」
「あ。それならあたし達も選んであげるっすよ。ね?」
「ふふっ。みんなで水着も浴衣も選びっこしましょうか。」
「あ、それサンセー。」
「オレもサンセー!!」
「あーはいはい。とっとと買おうぜ。」
「レッツ青☆春です!!」


そんなこんなで浴衣と水着+小物を買いました。

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こんな青春送りたかった…。
121124







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