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いったん着替えてから浴衣を買いに行くことにした海斗たち4人。
海斗と砕牙は、海斗の家で服を漁っていた。

「浴衣、ねぇ?祭りのときくらいしか着ないのに買う必要ってあんのか?」
「カイトってばわかってないなぁ〜。シチュエーションマジック☆だよ!!」
上半身裸のままで砕牙がそう言えば、海斗は意味がわからないと言いたげに砕牙の方を見た見た。
「んー…いつもと違うフインキにドキッ!!みたいなさぁ。」
「……わかんなくはねぇけどよ…例えばお前は、具体的にどんな感じに思うんだ?」
そうだなー…と砕牙は数秒俯いた顔を上げて、にやりと海斗を見た。
「着慣れない服装で歩きづらそうにしながらも、裾を気にしながら一生懸命着いてくるところとか。普段と違ってアップにされたために惜しげもなく晒されてるうなじとか。腕を上げた時に袖口から見え隠れする二の腕とか脇とか?そう言うチラリズムとか。あとー」
「いや、もういい。」
まだあるよ〜と頬を緩ませる砕牙に、海斗は片手で口元を押さえつつ手のひらを向けて砕牙を制した。

「とりあえずサッサと着替えて行こうぜ。」
Tシャツ一枚でいいかーなんて言いながらタンスを漁る海斗を、砕牙は後ろから羽交い絞めにした。
「だ〜めっ!!」
「ちょっ!!おま、なにすんだ!!」
ジタバタともがく海斗をよそに砕牙は海斗をベットに降ろした。
「いい?せっかく女の子達とお買いものなんだからちゃんとオシャレしなきゃダメ!!」
ベットに腰かけた状態でポカンとする海斗の目の前に人差し指を突き立てる。
フリーズした海斗をそのままに、砕牙はあれでもないこれでもないと服を投げ出していく。

「ったく…。あとでちゃんと片づけろよ?」
「りょーかーい。」


+++

待ち合わせ場所である駅前、現在時刻11:06。如月姉妹は暇を持て余していた
「海斗たち遅いですねー。」
「もうすぐもうすぐ着くって連絡があったんだから気長に待とう?」
「女の子待たせるなんて男としてダメだよね。」
「もう、そんなこと言わないの!!何か事情があったのかもしれないでしょう?」
「しぃちゃんと違ってあたしは短気ですよーだ。」
「拗ねないの。」
「…はぁーい。」
ケータイをいじりながら男性陣を今か今かと待つ二人。そんな二人の元へ二人組の男が近づいてきた。
「やっほー、彼女達。」
「ヒマそうだね。一緒に遊ばない?」
そう声をかけてきたのは二人とも面識のないチャラい男達だった。
如月姉妹はお互いに顔を見合わせて同時に首をかしげた。
「うわ、君たち双子?そっくりだねー。」
「双子ってやっぱり同じ動きしたりとかするんだ。」
二人を挟むように馴れ馴れしく近づいてくる男達に姉妹の眉間には皺がよる。
「私たちは連れを待っていますので……。」
「お誘いはオコトワリでーす。」
男達から顔を背けるように姉妹が顔を近づける。
「えー。なんでー?いいじゃーん。」
「そうそう。あ、なんならお友達も一緒に遊ぼうよ。」

「えー。オレ達もお誘いにあずかっちゃったよー。カイトどうする?」
「行くわけないだろバカ砕牙。」
「海斗!!」
「藤井さん!!」
いつの間にか現れた砕牙と海斗が、それぞれ男達の背後を取る様に立っていた。

「げっ、なんだよテメェ等!!」
「俺等が先に声かけたんだぞ!!」
「あ、これが三中ってやつだね、カイト!!」
「ばーか。三中じゃなくて三下だ。」
「あー、そういえばそんなんだったねー。」
「まあ使い方はあってたぞ。」
「お、やったね!!」
姉妹と男達を挟んでいつものノリで話していると、男達は侮辱されたことに気づいて怒りを露わにする。
「テメェ等…黙って聞いてればっ!!」

「……黙って聞いてた方が身のためだと思わない?」
「…同意、だな。」
砕牙が男の頭を、海斗が男の腕をぎりぎりと握り締める。
「いでででででっ!!」
「あだだだだっ!!な、なんなんだよお前等はっ!!」

痛みにもがく男達に、砕牙と海斗は口角を上げた。
「こいつ等の」
「連れですけど?」
身長、容姿、その他諸々と自分たちの方が劣っていると本能的に感じ取った男達は慌ただしく拘束されていた手を逃れて走り去っていった。

「セーギは必ずかーぁつ!!」
「あっけなかったな。」
男達を見送る砕牙と海斗、その背後でゆらりと影が揺れた。
「てやっ!!」
「うおっ!?」
突然の衝撃に前のめりで数歩進んだ海斗。
「どどどうしたいっちゃんんっ!?」
若干顔を青ざめさせる砕牙の隣では、伊月が大変ご立腹な様子で仁王立ちしていた。

「このバ海斗!!なんでもっと早く来なかったんですか!!おかけで変な輩に絡まれちゃいましたよ!!」
「ってー、なにしやがるアホ伊月!!」
背中を押さえながら海斗が振り返る。
「遅れたバ海斗には飛膝蹴りの刑です!!」
「おまっ!!」
ツーンとそっぽを向く伊月に今にも掴みかかりそうな海斗。その様子をはらはらと見つめる椎名。そこに砕牙が控えめに手を上げた。

「えー……っと、ザンゲしてもいいかな?」
気まずそうに視線を泳がせながら砕牙がそう言えば、三人の視線が集まる。
「……なんですか、砕牙先輩。」
「あのー…ですね、遅れちゃったの……オレのせい、なんだよね…。」
アハハ…と渇いた笑いを浮かべる砕牙に伊月が詰め寄る。
「…どーゆーことですか。」
顔を近づけて下から睨み上げれば、肩をすくめて頬をかいた。
「いやぁ…だってねえ?せっかくオデカケなんだからやっぱりオシャレさせたいじゃん?」
「…したいじゃなくてさせたい、ですか?」
「そうそう。カイトにオシャレさせようとクローゼット引っ掻きまくったんだけど、こだわり始めたら止まんなくって…。」
てへっ、と語尾に星を付ける勢いで砕牙がウィンクすれば、海斗がうんざりしたようにひっくり返すだ、とため息交じりにぼやいた。

「そうだったんですか…。だからお二人ともいつもよりかっこいいんですね。」
少し遠巻きに傍観を決め込んでいた椎名がそう言えば、砕牙は破顔し海斗は照れたように顔を反らした。
「えへへ、しーちゃんアリガトっ。」
「砕牙先輩の場合、元が元なだけにかっこつけてもそんなに変わんない気がしますけどねー。」
「うへー。いっちゃん厳しい…。」
「ふふっ。藤井さんは普段からかっこいいそうですよ。」
「ちょ、おねーちゃん!!」
「やったね!!褒められちゃったよカイト!!」
「ばっ!!こんなところで抱き着くな暑苦しい!!」
「えーん、フラれたー。しーちゃーん。」
「そっちも却下!!」

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解説
如月姉妹も二人っきりで出かけると月1くらいの頻度でナンパに遭遇したりするよ!!砕牙は逆ナンとか日常茶飯事だよ!!海斗は包帯のせいか声かけられないよ!!ティッシュ配りにもたまに避けられるよ!!でも黙ってれば普通にイケメンだよ!!隣に砕牙がいるから気付かれ難いけどね!!
121109






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