▼13


「まってました夏休みーっ!!!」
修了式とホームルームを終え、午前中で終わった学校の校門で両腕を伸ばしながら叫んだ砕牙。そんな砕牙に黙れと海斗がチョップを落とす。
「うぎゃ!!でもめげない!!ねーねー、二人は夏休み何するー?」
チョップが落とされた頭をさすりながら、少し遅れてやってきた如月姉妹に向かって問いかける。
「あたしは絶対花火大会行きたいです!!ってか行きます!!」
「んじゃ花火大会はローア君とイリアちゃんも誘ってみんなで行こうよ!!」
「花火大会…。」
「さんせー!!お姉ちゃん、浴衣着ていこうね〜。」
「えーっと…浴衣、まだあったかな?」
「どうせなら今から買いに行こうよ!!」
「あ、それいいですね!!ね、お姉ちゃんも一緒に行こうよ。」
「でも…前のがあったと思いますし…。」
「えー、新しいの買おうよ〜。あたし、どっかにやっちゃったし。」
「そうそう。オレがかわいーの選んであげるよ!!」
「やった!!砕牙先輩センスいいから頼りにしてまーす!!」
「だからさ、一緒にいこうよ。」
「そう、ですね。それもいいかもしれません。」
「んじゃ今からユカタ買いに行くってことでケッテー!!」
「意義なーし!!」

「…お、決まったか?」
マシンガントークを始めた砕牙と伊月にこの空いた午後の予定を丸投げして携帯をいじっていた海斗。
「むー…カイトってばきょーちょーせーに欠けるよ?」
「もっと話に入ってくるべきですよ!!」
「あ?お前らが勝手に楼亜達をメンバーに入れて話進めるから、本人たちにメール送ってたんだよ。」
「うわっ、用意周到…。」
「さっすがカイト!!おかーさんしてるね!!」
「……砕牙、殴るぞ?」
「膝カックンした後に言わないでよ!!」
ビックリしたじゃん!!と地面に膝をついた状態のまま海斗を見上げる砕牙。

「…それで、返信は有りましたか?」
「ああ。ルカさんは用事があって行けないらしい。他2名は返信待ち。」
「そっかぁ…。ルカ君来れないのか…。」
「……砕牙、仮にも年上なんだから君付けはどうなんだ…。」
「え、だって前メールで好きに呼んでいいって言ってたから。…なんかルカさんよりはルカくんの方がしっとり来たんだよ。」
「砕牙先輩、しっくりです。……でも、確かにそうですよね。」
さんなんてつけられる柄じゃないと思いますー。と親指を下に向けてブーイングをする伊月。
「だよね〜。ホントは社長って呼ぼうと思ったけど拒否られちゃったんだ。」
「あ。あたしも断られました!!なんであたしは呼び捨てで呼んでますよ。」
「……お前らなぁ。」
年上には敬意を払えよと海斗が言えば、すかさず伊月が敬意を払うような人間じゃなからいいんですよと顔を顰めた。

「ルカさんはフレンドリーな方なんですね。」
椎名がそう笑えば海斗と伊月が微妙な顔をした。
「しーちゃんはルカ君とあんまりメールしないの?」
「…えぇ、まぁ。」
そう困ったように眉尻を下げる椎名に、伊月が答えた。
「お姉ちゃんは機械音痴だからケータイもうまく使いこなせないんですよ。」
「伊月ちゃんっ!!」
「ホントの事ですよー。」
「あー……だからしーちゃんの返信は遅いのか。」
ナルホド納得。と砕牙が頷けば椎名は気まずそうに小さくすみませんと零した。

「楼亜が、愛咲はオヒメサマだっこで連れてくるってよ。」
傍観を決め込んでいた海斗が携帯を見ながらそう告げれば、伊月が呆れた様な嘲笑するような顔で、お姫様だっこって…。とぼやいた。
「そんじゃ学生組で花火大会だね!!」
「学生組…だったらちーちゃんもじゃないですか?」
「あ、あとルイ君もだね。」
「…一応小学生も学生、ですよね…?」
学生、と呼ばれる部類の人達を次々と上げていく面々に、海斗は首の後ろを触りながらため息を吐いた。
「はぁ。お前らな、本人の予定を聞いてから話を進めろよ。」
「えー。…ま、なんとかなるデショ!!」
「ならねぇ。あー…、まずちー坊はシフト入ってるから無理だ。ルイはバスケ部の合宿でいない。レクは知らん。あと白さんも仕事な。」
時折首を捻りながらそう言った海斗を、唖然と見つめる砕牙、伊月、椎名。
「………海斗って人の予定まで把握してるんですか…?」
「砕牙の予定は大体把握してるけどあとはそんなにしてねぇ。強いて言うなら俺の予定を組むうえで白さんやちー坊の予定が必要になってくるからそれとなく……って感じだ。」
「オレの予定ってはーくされてるんだね…っ!?」
砕牙がそう驚けば、海斗はうんざりしたような視線を向けた。
「お前がほぼ毎日俺にくっついてくるから、お前の予定イコール俺の予定みたいな感じになってんだよ。」
俺がバイトの時はほぼ居座ってるしな。と再び溜息を零した。
「………はっ!!」
「何、今気づきましたみたいな反応してんだよ。」
「あはー…。でも、考えてみればずっと一緒だよね。喫茶店でもだいたいカイトの事ばっか見てるし。」

「……なんか今の部分だけ聞くと海斗のストーカーみたいですよね。砕牙先輩って。」
伊月がそう言えば、海斗がジロリと砕牙を睨むように見る。
「お、オレはストーカーじゃないよっ!?待ち伏せしてないじゃん!!」
「ストーカーって、する側に恋愛感情や好意があれば成立するらしいですよ?」
「……え。」
「確か…待ち伏せ、付きまとい行為の他に監視していることを告げたり、面接、交際の要求。あと無言電話や連続電話なども…でした気がします。」
「…如月、お前なんでそんな事知ってんだ…?」
「あ、クラスの人に相談されたことがありまして…それでどんなものかというのを軽く調べたんです。」
「…おねーちゃん、なにで調べたの?」
「ええっと…法律に関する、みたいな本で調べました。」
「つまり好意を持って対象者に必要以上に付きまとう…。」
「…対象者に監視…ずっと見てるよ的なことを伝える…。」
「………。」
「ちょっ!!!みんなそんな目で見ないでよっ!?オレ、無言電話かけてないしこうさいのよーきゅーなんてしてないもん!!!」
今にも泣きそうになりながら必死に弁解する砕牙。それを引き気味に見つめる海斗、椎名、伊月。
「……ま、砕牙がストーカーだとしても今更過ぎるだろ。」
「へ?」
「そーですね。もうストーカー歴3年のベテランですよね。」
「え?ぇえ?」
「ふふふっ。すこしいじわるが過ぎたみたいですよ?」
クスクスと楽しそうに肩を揺らす椎名に、ようやく自分がからかわれていたのだと理解した砕牙。
「んなっ……みんな酷いっ!!」
「でもあながちまちがってねぇだろうが。」
「…えー、ひどいっ!!」
「あ。とりあえず着替えてから再集合でいいですか?」
「いっちゃんんんんん!?」
「おう。昼飯はどうする?」
「どうせらみんなで食べませんか?」
「お、サンセーです!!」
「ちょちょちょっと!!オレの事ムシなのっ!?」
「じゃあ11時に駅前でいいか?」
「はいっ。」
「りょーかいです!!」
砕牙の事を無視して進められる話に、砕牙は少し俯いて眉間にしわを寄せた。
「じゃあ砕牙先輩。浴衣、可愛いの選んでくださいね!!」
「楽しみにしてますね。」
「!!…う、oui!!」
去り際にかけられた声に思わず笑顔がこぼれた。
「……へへっ。」
「なぁに笑ってんだ?」
海斗の呆れたような視線に満面の笑みで答える砕牙。
「オレ、やっぱりみんなの事大好き!!」
「…やっぱストーカーじゃねぇか。」
悪戯っ子のようにニヤリと口角を上げる海斗に、嬉しくてしょうがないという笑顔で肩をすくめた。
「みんなと過ごせるならストーカーでもいいや。」
「…そうか。じゃあ俺はちょっと交番に行ってくるか。」
「カイトーっ!?」
「…冗談だ、バーカ。」
「むー…カイトのドエスー。」
「そんなこと言ってると服貸さねぇぞ。」
「え、ちょ…っ!?カイト待って!!服貸してっ!!」



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補足
砕牙は海斗んちの方が学校から近いからって入り浸ってる。
なので海斗に服借りたりとか、海斗の部屋なのに砕牙の私物とかあったりする。
ある意味半同棲←

120511






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