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「あははははー。まーてーよー。」
「来るなあああああああ!!!」
「なんでコッチくるのおおおおおおっ!?」

片手には火花を散らす花火3本、もう片手にはロケット花火を装備した楼亜に追いかけられる海斗。そして花火を持ったまま砕牙の方に逃げる海斗。追ってくる海斗と楼亜から若干涙目で逃げる砕牙。そんな様子を女子たちの近くでビデオカメラに収めているルカ。
「…ちょっとした地獄絵図ですね。」
「男の子って、やっぱり元気が一番ですよね。」
「元気の次元を超えてる気がするデス…。」
「……ロケット花火、ぶっ放す?」
真顔でロケット花火を取り出すルカに伊月と椎名は慌てて反論した。
「危険、命キケン!!」
「そ、それはさすがにやめた方がいいと思いますよ?」
「…ルカの冗談デスヨ。」
本気にしなくていいデスと燃え尽きた花火をバケツの中に突っ込みながらイリアは言った。
「ルカは無口で無表情ですけど、中身は甘いもの大好きなお茶目さんなのデス。」
「お茶目さん…。」
ルカの風貌とお茶目さんという言葉が余りに似合わなくて軽く吹出す伊月。
「伊月ちゃん!!」
笑っちゃ失礼ですよと、椎名が伊月を咎めた。
「ルカは別に気にしないデスヨ。」
ねぇ?とイリアが問いかければ、ルカは伊月の頭をぽんぽんと叩いた。
「……ちょうどいい高さ。」
「…ロケット花火ぶっ放してもいいですか。」
「…命きけん…。」
「仲良くなれたみたいデスネ。」
「そうですね。」
伊月とルカのやりとりをほのぼのと見つめ、イリアと椎名は微笑んだ。
そんな和やかな空気の中に
「オタスケえええええええ!!!」
絶叫金髪バカが乱入した。
「藤井さん。大丈夫ですか?」
「まだくたばってなかったですか。」
「砕牙さんって足早かったんデスネ。」
「……おつかれ、おかえり。」
「ただいまー!!しーちゃんオタスケ!!」
砕牙が椎名の後ろに逃げ込むと同時に海斗がやってきた。
「砕牙!!如月の後ろに隠れんじゃねぇ!!」
「ふははははー!!カイトがフェミニストなのは知ってるんだぞー!!大人しく切腹しろー、お母さんも泣いているぞー!!」
椎名の背後から顔だけ出して海斗に向かって叫ぶ砕牙。椎名が少し困り顔なのに気づく様子はない。
「立場反対な気がするんだが…。つか切腹したら逆にお袋泣くと思うんだが。あと切腹じゃなくて降伏!!」
「え、幸せになるの?」
「そっちじゃねええええ!!!」
「……ってか、海斗がフェミニストなところが間違いじゃな気がするんですけど。」
線香花火に目を落としたままで伊月が言えば、砕牙はきょとんと眼を丸めた。
「カイト、女の子に優しいじゃん。」
「……あたしにはあんまり優しくないです。」
「そりゃ、伊月は女っていうよりはまだまだ子供だからだろ。」
「むきー!!一個しか変わらないくせに!!しーちゃんと同い年なのに!!双子なのに!!」
まだ火のついている線香花火を海斗に向かって投げる伊月。しかし海斗はそれを軽々と避けた。
「あっぶね!!…つーか、こういうところがガキなんだよ。年齢云々じゃなくてさ。あと、双子だろうが兄弟だろうが、別の人間だ。誰がどうとか関係ないだろ。伊月は伊月、そうだろ?」
「〜っ!!」
「………五十嵐くん、なんだか告白みたいに聞こえます。」
「っ!?」
伊月に向けていた視線を椎名に向ける海斗。その顔はやや赤いが、夜の闇の中では気づく者はいない。
「……青春だな。」
「……どこがデスカ。」
「青春の名のもとに告白大会ってか?」
楼亜が指に花火を挟みながら茶々を入れれば、ルカがリア充爆発しろと呟いた。
「べつに告白したわけじゃっ!!」
「おーお、若いってのはいいねぇ〜。」
「…おまえも若いだろ。」
「この中だと一番若いのはイリアちゃんだろ。」
「……精神的には伊月さん?」
「ダウトおおおお!!!」
「ぉわあっ!?」
伊月に蹴りを食わらされて、あたった場所がたまたまひざの裏だったせいで、膝カックンよろしくルカは地面に膝をついて、その流れで両手もついた。
「…ルカ?大丈夫か?」
「……虚しさがこみあげてきた。」
「早く起きやがれデス社長。」
イリアにそう言われ、渋々と言った感じの緩やかな動作で立ち上がったルカは、伊月に向かって親指を突き立てた拳を向けた。
「いい蹴りだった…っ!!」
「え、ドM?」
「……ルカなりに気にするなって言いたいんだと思うデス。」
「さらに言えば、たぶん悪いこと言ってすまなかったとでも思ってんじゃね―の?」
イリアと楼亜が変わりばんこにルカの奇行の理由を説明し、それを聞いた伊月は深くため息を吐いた。
「…ルカさんと話すのは通訳が必要ですね。」
「…大丈夫だよ、慣れるから。」
それはなんか嫌だ。と、伊月は思った。
「ま、海斗ならなんとなくわかるんじゃね?」
急に楼亜に話をふられて、未だに冷静さを取り戻していなかった海斗は上擦った声を上げた。
「どんな声出してんだよ。」
「わ、悪い。考え事…してた。」
それで何の話だ?と問えば、海斗ならルカの言いたいことわかるんじゃねーかって話。と楼亜が先ほどの言葉を反復した。
「…なんで俺がわかるって思ったんだ?」
「あ、やっぱりわかるんだ。」
「……まあ…何となくは。」
質問したのに質問で返され、少しムッとする海斗。
「だろ?だって、海斗自身なんか口下手そうだし、それに砕牙いるしな。」
「砕牙?」
「え、オレがなに?」
椎名の後ろに隠れていたと思ったら、花火を漁っていた砕牙。話を聞いていなかったが、自分の名前が呼ばれたことにより話の輪に加わった。
「砕牙はあれじゃん。変な単語ブッ込んでくるけど、海斗はあいつが何言いたいかわかるんだろ?だから。」
その言葉に海斗はもちろん、伊月とイリア、ルカもああ、なるほど。と言いそうな具合で納得した。何の話―?と不満を漏らす砕牙は無視だ。
「五十嵐くんは人の心に敏感なんですね。」
くすくすと楽しそうに声を漏らしながら笑う椎名に、海斗は反論しようと口を開いたが、一拍置いて出てきたのは溜息だった。
「…好きにしろ。」
「はい、ふふっ。」
「……椎名さん最強説ふじょー…。」
「俺、椎名ちゃんが猛獣使いに見えてきた。」
「差し詰め海斗さんはライオンデスネ。」
珍しいものを見た。という視線を海斗と椎名に送る神高組。イリアの零した言葉に、椎名は少しからかう様におどけて言った。
「あら、五十嵐くんはライオンではありませんよ。」
「…じゃあ虎デスカ?」
「いいえ。五十嵐くんは優しい猫さんです。」
「はあっ!?」「ぶっ!!」「…っ!!」
「「ねこ(デスカ)っ!?」」
「カイトがねこー!!にゃー!!」
「鳴くな!!寄るなっ!!」
「イカクだ!!フシューッ!!」
「ッは!!こいつは傑作…っ!!くくくっ…!!」
「…−っ!!――っ!!!」
「そこっ!!楼亜、腹抱えて笑うな!!ルカさん肩が震えてるッ!!」
「か、い、と…にゃんっ!!」
「アホ伊月も笑い過ぎだ!!」
「カイトー!!にゃー、にゃにゃにゃー!!」
「人語を話せバカ砕牙!!!」
「にゃー。」
「にゃーにーにゃー。」
「お前らっ……、覚悟は、できてるよなぁ!!!」
「うにゃー!!」
「…にゃー。」
「にゃにゃにゃっ!!」
「にゃーん!!」
ねこ語を話す砕牙、ルカ、伊月、楼亜を花火を持って追いかけだした海斗を微笑ましげに眺める椎名。
「……椎名ちゃんって、すごいデス。」
呆れや感心など様々な気持ちを混ぜたような複雑な気持ちで椎名を見つめるイリア。
「……五十嵐くんは、野良猫さんだから。」
「?」
海斗を見つめる椎名の横顔に、少しの哀愁を感じた。
「だからね。」
海斗に向けていた視線をイリアに向けて、椎名は嬉しいけれど、少し照れくさいそんな顔で笑った。
「ねこさんがいっぱいいると、楽しいですね!!」
「…そうデスネ。」
その笑顔につられるようにイリアもふわりと笑い、2人は楽しそうに走り回る5人を見ていた。


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気づくと会話文ばかりになってるというミステリー←

111122





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