▼04 (1/2) 梅雨も間近に迫ったある日の放課後、三年と二年の教室を結ぶ渡り廊下にいつもの4人組で集まっていた。 「ヒマ人、あっつまれ〜!!」 「よし、帰るか。」 「帰りましょー。」 「まってええええぇぇぇぇええ!!!」 一日の授業も終わり、委員の集まりも特にないため寄り道を提案した砕牙だったが、椎名は書道部と茶道部。伊月は生徒会の他にテニス部。海斗はバスケ部のレギュラー……。ただひとり帰宅部の砕牙は暇を持て余したくないと、他三名を引き留めていた。 「ねーねー、どっか寄って行こうよー。」 「私は…今日茶道部のお茶会がありますし、それに書道部に提出する用の作品も書かないといけないので……。」 「さらに言えば如月は保健委員の書類整理もある。」 「うぐぅ…。」 二人の話と日ごろの態度からしても、椎名が忙しいのは火を見るより明らかだった。 彼女は書道部と茶道部を掛け持ちし、文化祭シーズンになると華道部のピンチヒッターも請け負ったりする。なおかつ保健委員の仕事をほとんど一人でやってのけ、さらに生徒会からはみ出た仕事まで処理しているのだから、放課後は遊びに行ってる暇などないのが現状だ。 「が、頑張ってね。しーちゃん。」 もはやこう言うしかない砕牙であった。 「はい、申し訳ありません。また誘ってくださいね。」 椎名は何度か振り返りながら軽くお辞儀をして渡り廊下を後にした。 「…いっちゃ」 「あたしは部活でせーしゅんするですよー。」 伊月は、ではっ!!とウィンクをして足早に逃げて行った。 「……かい」 「バスケ。」 「…………。」 「………図書委員の仕事。」 「………………。」 「………。」 「…………………。」 砕牙が、海斗のシャツを掴んだ。 「……っ。」 「…カイトぉ。」 ひとりにしないで、と潤んだ目が訴えていた。 「……カフェラテ。」 視線に耐えきれなくなり、海斗は顔を反らしてため息を吐いた。 「!!、oui!!」 砕牙は思い切り海斗に抱き着いて破顔した。 「お、まっ!!抱き着くなっ!!!」 「カイトー!!大好きだー!!!」 「離れろおおおおおぉぉぉぉ!!!!!」 此処は渡り廊下なわけで。人通りはもちろんそれなりにある訳で。二人は男同士で仲がいいわけで…。抱き合って大好きだとか言っちゃってるわけでして。……そういう仲なんじゃないかとか言わたりなんだり。 だが何故か、砕牙と海斗は抱き合っていようが、肩を組んでいようが、手を繋いでいようが、まわりは何も言わない。何故ならとても自然にやってのけるからである。まあ、3年近くそういう行動をしていれば周りの方が慣れてくるというもので。 ようするにこんな風にいちゃつくのは日常茶飯事なのです。 「いつものとこでいいでしょ?」 「おー。」 「んじゃ行きますか。C.World(シーワールド)に!!」 そして彼らは街の隠れ家的喫茶店、C.Worldへと向かった。 → |