身 長 差
*吹雪・雷門中設定。二人は3年になってから付き合い始めました。
二人で歩く 学校からの帰り道。
「ちょっと寄って行きたい所があるんだが、いいか?」
そう言うや否や君は堤防の道を脇道に逸れて、階段を降りていく。
『いいか?』って訊きながら答えはもう決まってる。
君のそんなとこが、付き合いはじめてから余計に心地いい。
彼の背中を追って辿り着いたのは、学生服店で―――。
「雷門中の夏服の上下が欲しいんですが…」
「はい、採寸しますよ」
優しそうな年配の店員さんにサイズを図って貰ってる豪炎寺くんをポカンとしながら眺めて……
それから、ああ……そうか、って気づく。
君は、去年より成長して夏服が着れなくなったんだ。
店員さんとやり取りする彼の横顔は、確かに出会った頃より大人びていて。肩幅も広くなって…。
「来週から夏服に切り替わるのをギリギリまで忘れていて、な」
「そっか………」
何の違和感もなく去年の服がぴったりと着れてしまった僕は、もう移行期間の初めから夏服に替えていて。
む〜………僕って全然伸びてないってこと?
***
「ん〜………これも着れるけど……これは?どうかな?」
「クス………肩幅余ってるぞ」
寮に帰った僕は、彼が見守る前でファッションショーだ。
着れなくなってる服、1枚くらいはあるよね?
僕だって身体測定の時伸びてたもん………少しだけど///
「残念ながら、着れない服は……無いな」
「………」
豪炎寺くんは項垂れる僕の髪を撫でた。「何を…躍起になってるんだ」
「だって………」
豪炎寺くんだけ大人に近づいて……ずるいよ。
「僕を……置いてかないで」
心細げな表情にすぐに気づいたのか、髪を撫でていた手が後頭部に回り………不意に抱きよせられてコツンとおでこがかれの鎖骨の下辺りに当たる。
「置いていってるつもりはない」
優しい声が僕の心をふわりと包んだ。
「ジャンプをすれば滞空で俺を越すときもある」
「……………」
「キスだって背伸びすれば…届く」
ドキン…として豪炎寺くんを見上げると、少し腰を屈めて僕の顔を覗き込み…視線が合えば心を溶かすように切れ長の目を細める。
「それに………」
「…わぁっ…!…」
床に散乱した夏服を拾い集めていた途中なのに、僕はそれら全てを床に投げ出した。
「こうしてるときは身長差なんか関係ないだろう……」
ベッドに押し倒された僕を四肢でブロックするように上から向かい合い………そんな僕を一番動けなくするのは、その漆黒の深い眸なんだ///
「すきだ……吹雪」
横に並んで立った時の
頭のてっぺんの位置なんて
関係ない。
キスが届く距離と、温もりが伝わる密度と………君のきもちさえあれば。
僕は、唇に 少し温度の高い君の唇の感触を感じながら目を閉じた。
―――神様。
身長は伸びなくてもいいから
この人とずっと一緒にいさせて下さい。
身 長 差*完
*strawberry22* 榎本様に捧げます
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