ポケットに入れた携帯が震えた。メルマガかなと思いながら携帯を開くと、めんまの家に行くから集合というメールだった。 まだ学校だっつうの。 心の中で毒づきながら病院よらなきゃいけないから無理と短い返信を打つ。 「みょうじさん、ちょっといいかな」 中学が同じだった男子が声を掛けてきた。名前なんだっけ……確か委員会が一緒だった気がするけど忘れちゃった。 携帯を仕舞って「なに?」と聞き返せば教室の外に連れ出された。 「なんか久し振りだね。みょうじさんが転校してきたって聞いて驚いた」 「わたしもまさか出戻りするとは思わなかったよ」 本当誰だっけこの人。全然名前出てこないや。自己紹介してくれたりとかしないかな。 「でも、嬉しかった。もう会えないって思ってたからさ……」 この場合ありがとうって言った方がいいのかな。 返事に困ってると某くんは勝手に話を続けてくれた。 「本当は卒業式で言おうって思ってたんだけどタイミング逃してもう諦めるしかないって思ってたんだ」 「え?」 「でもまたこうやって会えたから今度こそ言おうと思って……俺、みょうじさんのことがずっと好きだったんだ!」 耳まで赤くして彼は言った。 好意を持たれるのは嬉しい。でもわたしはそれに応えられない。 「ありがとう。でも、ごめんなさい」 決まり文句のような断りを口にする。眉を下げる某くんを見て胸が痛む。 「そっか……やっぱり好きな人とかいるの? 中学の時もみょうじさんが誰かと付き合ってるって話聞かなかったけど」 「うん。忘れられない人がいるの」 「じゃあ、どんなに頑張っても駄目か。なんとなくわかってたんだけどさ。聞いてくれてありがとう」 弱々しい笑みを残して彼はわたしに背を向けて去っていった。 わたしなんかと違ってずるずると食い下がることなくて潔い人だ。 「おまえって案外モテるんだな」 「……立ち聞きしてたの?」 「聞かれるようなところで告白する方が悪い」 壁に寄りかかるようにして立っている松雪。 「はいはい、悪かったですね」 「まさかお前もめんまが好きだったとは思わなかったよ」 「は?」 「こないだ言ってただろ? 別に人の性癖に口出すつもりはないけどさ、お前こそ忘れた方がいいんじゃないか?」 通りで反応がないと思ってたらそういうことか。冗談だと流されてたんじゃなくて、わたしがめんまのことを好きだと言ったと思ってたのね。 そりゃ好きだけどそれは恋愛感情じゃない。そういう意味で好きなのは松雪だけなのに。 溜め息を吐いてから松雪に近付く。 「本当なんにもわかってない」 「なんだよ、それ」 「自分で考えれば? 頭いいんでしょ」 吐き捨てるように言って教室に戻る。 鈍感にも程がある。あの子のことしか見てないから他には興味ないってことだとしても有り得ない。あの様子じゃ鶴見の気持ちにも気付いてないんだろう。安城に付き合わないかとか言ってたし間違いない。 言ってしまったと悩んで泣いた時間を返して欲しい。 殴ってもいいですか? ← |