明日は学校行くからもう帰るという友達を駅に送るために外に出る。日が落ちていないからかまだ暑さが残っていた。
 何気ない話を続けながら歩く。その途中で見知らぬ男と歩く安城を見掛けた。


「あっちって確か……」


 二人の消えて行った方向を見て目を丸くする。


「どうしたの?」

「ごめん、送れなくなった。駅までの道わかるよね?」

「え?」

「今度なんか奢るから許してっ」


 それだけ言い残して安城を追い掛ける。「ハーゲンね!」という声が聞こえた。高いものを要求されたけど諦めるしかない。
 二人の消えた方にはラブホの並ぶ通りがある。見た目はあんなでも本当は真面目な安城が進んで行くとは思えない。はっきりとは見えなかったけど気の重そうな顔してたし。
 わたしの勘違いでお節介だとしても構わない。放っておくなんて無理だ。
 視界に嫌がる安城を無理矢理中に引き込もうとする男の姿が入った。


「あれ、安城?」


 頭に血が上りそうになった時、聞いたことのある声がした。制服姿の松雪が奇遇だなと言わんばかりに話しかけている。


「今、宿海らと遊んでんだよ。おまえも混ざれば?」


 絶対嘘だな。
 直感的に思いながらさもわたしも一緒に遊んでいたように松雪の方に行く。


「本当だー。偶然だね、安城」


 わたしの登場に安城だけじゃなく松雪も驚いていた。男の方は来たのが女で安心したような顔をしている。
 にこやかに安城の方に近付いて男の腕を掴む。


「なに? 君もこっちで遊ぶ?」

「遊ぶ訳……」


ないでしょ、と襟元も掴み思いきり背負い投げをかましてやった。最近また道場に顔を出してるのもあってブランクはあまり感じることなく、体は動いた。
 クッション代わりにゴミ箱の方に投げたからかすごい音がした。


「ほら、行くよ」


 目を白黒させてる男を放置して、安城の腕を掴んで走り出す。


「松雪も」


 声を掛けて三人でラブホから離れていく。駅の近くに着いてようやく足を止めた。


「なにやってんのよ!」


 開口一番に安城に怒鳴る。


「いい年なんだからああいう男にどこ連れてかれてくかわかるでしょ?」

「そ、そんなの……」


 わかんなかったんだから仕方ないじゃんとごにょごにょと言う。


「一緒に居る友達から聞くでしょうが。流されるのはいいけど自分の身くらい自分で守れないでどうすんの? 今回はわたし達が居たからよかったけど」


 呆れるしかない。周りからどういう風に見られてるかを少しは考えて行動した方がいい。


「……ごめん」

「反省してるならいいよ。次から気を付けな」


 軽く安城の頭を撫でる。それから松雪の方を見る。


「あんたも制服なんだから行く場所考えたら? 変な噂流れても知らないから」

「学校サボって私服でふらついてるのもどうかと思うぞ」

「……うるさい」


 じとっとした目で睨む。


「じゃあね」

「あだな、ちょっと待ってよ」


 もう用はないと一人歩き出すと安城が慌てたように呼び止めてきた。


「なに?」

「帰るなら一緒に帰ろうよ。方向一緒なんだし」


 そんな顔されたら断れないじゃん。結局学校を休んだ意味はなく松雪と顔を合わせるはめになるなんとついてないなぁと思いながら安城の言葉に頷いた。




わるいくせ
(結局わたしも流されてしまう)










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