追い掛けていって告白するなんてあの日のゆきあつと一緒じゃない。なんて皮肉なんだろう。
 今でも鮮明に覚えている。
 蝉の声も色鮮やかな緑もその隙間から差し込む光も地面の感触も夏の匂いも。


『似合うと思ったんだ。おれのだいすきなめんまに!』


 一音一句間違えずに思い出せるよ。キャップから覗いた耳まで真っ赤にさせて言ってたよね。
 あれを聞いてわたしの目の前は真っ暗になった。わかってたはずなのに聞きたくなかった。追い掛けたりしなきゃよかったって思った。足が地面に張り付いて動けなくなった。
 めんまが羨ましかった。ゆきあつに好かれるめんまが妬ましかった。どう頑張っても自分がめんまみたいにはなれないのがわかってたから悔しくて悲しくて仕方がなかった。
 だから早くじんたんのところに行っちゃえって思った。ゆきあつの告白にちゃんとした返事をしないでじんたんを追い掛けためんまの背中を見送った。
 でも、もしもあの時ちゃんと追い掛けていたら。慌てなくても平気だと声を掛けていたら、そしたらめんまはわたし達の前からいなくならなかった。
 ゆきあつは自分のせいだと言ったけど、本当はわたしのせいだ。あの時嫉妬して追い掛けるのをやめたわたしがいけないんだ。


「好きでいるのやめようって思ったのにな」


 上を向いても涙は止まらないで頬を流れていく。
 この気持ちを圧し殺そうと思った。好きだというこの気持ちがあったからいけなかったんだって。もしもこんな気持ちさえなければわたしはめんまを追い掛けられた。そもそも、あの出来事だって起きなかったかもしれない。だからこそ、ゆきあつがわたしを見ることがないのはわかってても好きと思うことが罪だと思った。
 なのに、言ってしまった。わたしはどうしようもない。
 謝ったって、この気持ちを消したってめんまは帰ってこないのに。じんたんの前にめんまが居たとしてもそれは生きてるあの子じゃない。何をしたって全部手遅れだ。
 こんな現実を見たくなくて逃げ出したのに、意味はなかった。めんまが居なくてわたし達は居て毎日が過ぎていく。どこに居たってその事実は変わらない。後悔ばっかりが膨らんでいく。
 涙はまだ止まらなかった。




夜に食べられた










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